2014年3月21日金曜日

フォークランド紛争:総括と反省、評価と戦訓(前半 アルゼンチン編)

戦争、紛争は戦闘が終わったから終わりというわけでは有りません。
それを評価して戦訓を確認して、戦後の外交問題を解決させてようやく終わるのです


では、反省点等を上げていきましょう


アルゼンチンの反省点と敗因

まず、そもそもアルゼンチンは何故フォークランドに侵攻したのか。
これはフォークランドに国民の目を移すことで不満を外に逸らしたのはいいのですが、
それが加熱しすぎて、
国内の活動家が勝手にフォークランドに上陸して領有権を主張するなど
国内の不満とフォークランド奪還せよの声は最早大統領では止められなかったのです

しかし、大統領は実際の所弱腰でした

まず、英国は二次大戦以降の弱体化に加え、
財政難と経済的停滞の英国病の真っ最中。しかもフォークランドの維持は本国からあまりにも遠すぎて予算がかかるだけで
あまり重要視されていない。

つまりよほど相手が怒るような事をしない限り本気で取り返しに来る可能性は低いだろうととアルゼンチン側は判断したため、
外交的に刺激を与えない方法を選択しました。

それが、「フォークランド及びサウスジョージア島占領の際は英国側に『絶対』死者を出してはならない」という所でした
この目論見は成功し、英軍側に死者を出さずに占領に成功しました。
また、フォークランドに戦闘機や戦車を置けばイギリスに刺激を与えると考えて送り込まなかったのです


しかし、アルゼンチンは判断を誤りました。
フォークランド侵攻と、その後のアルゼンチンの態度は
内閣唯一の「男性」 マーガレット・サッチャーを本気にさせるには十分だったのです
1982年4月2日、前日アルゼンチンがフォークランドに侵攻したことについて国会での発言




アルゼンチンの想定に反して英国は本気で取り返しに来ました。
当時使える空母を全て使い、陸戦部隊も強者揃い、歩兵のエリートたる空挺部隊が中核。
これが本気でなければ何だというのか


ここまでが、外交及び戦闘前の反省点、敗因です


では、実際の戦闘段階での敗因は何なのか。

まずは補給線の切断です

イギリス海軍がフォークランドに到着してからというもの、大型輸送船は迂闊に近づけなくなりました。

これはイギリス海軍が原子力潜水艦を使って巡洋艦を沈め、
これを警戒するアルゼンチン海軍の対潜水艦戦闘能力が低いことによる
輸送艦投入の躊躇が生み出した状態です。

空輸するにも量が足りません。
数日前に紹介した空中給油を何度も繰り返す「ブラックバック作戦」ではポート・スタンレーの空港を使用不能にすることは失敗したものの、
ハリアーは相変わらず飛んでおり、撃墜される可能性があったわけです
そんな状況でありながら、悪天候の時に低空飛行を駆使することで60回以上の空輸を成功させているそうです
アルゼンチン軍の補給線を支えたC-130輸送機
画像は米軍のもの



今どき、というか千年以上昔からそうですが、
軍隊は補給が無ければ全く活動できませんし、戦力もどんどん低下していきます
燃料武器弾薬食料水その他日用品医療品(あと時代によっては娼婦)が十分に揃って始めて軍隊は本来の力を発揮できるわけで、
これを運び込むことが出来なければ軍隊はどんどん弱っていきます。

因みに、個人的に軍事ヲタを名乗っていいのは補給を想定して考えるようになってからだと思っています
補給のことを想定せずに話をする奴は軍事ヲタ以下の「にわか」と言うべきですかね
まあ、それは別の話として。


他には兵士の練度に有ります。
今どきの兵士は数じゃありません。練度×数が重要なのです

アルゼンチンは数が多いとはいえ新兵と徴兵主体の歩兵のみの部隊。
方や英国軍は空挺と海兵隊という陸戦エリート。

これだけ差があると二倍程度数が居たところで意味が有りません。

例えば、数が2倍以上居たとしても先述の通り、
補給線を断つように包囲してしまえば2倍数が居たところで絶対に負けてしまいます
実際、グースグリーンで包囲されたアルゼンチン軍は倍以上の数が居たにもかかわらず降伏しています

そのため、練度が高い兵士や軍隊は絶対に包囲されないように動きますし、
逆に相手をいかに迅速に包囲して叩き潰すかを重要なものとして考えます


韓国軍がいくら数が多かろうと「たかが徴兵だろ」と言われて
あまり強いと思われていないのはこの辺りに理由があります。

自分としては補給能力がやたら低い上、兵器や装備のメンテ不足やらの方で
かなり割食ってる気がしますけどね



ちょっと長くなったのでここで切ります。
続きは次回、「フォークランド紛争:総括と反省、評価と戦訓(後半 イギリス編)にて


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