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つまり古い順に読むことをおすすめします


左にあるラベル毎に続き物の話をまとめています

2014年2月26日水曜日

5分で分からないシリア紛争 組織紹介6.5 政府側組織ヒズブッラー

引き続き、ヒズボラです。


ヒズボラは武装組織ではありますが、政治組織でもあります。
前回の記事にも書いたように、議席を持ち、テレビ局を保有し、ラジオ局を運営しています
それどころか、レバノン議会に10以上の議席を持ち、連立内閣にも参加しています

また、学校や病院も運営しており、貧困層からの支持が多いようです


2008年にはレバノン議会で、「国内で軍事組織として存続することを認める」という決定を全会一致で了承、
国軍に吸収されることもなく、レバノン政府公認の武装組織として現在まで継続しています。

内戦で国軍が崩壊した後、新政府が出来たり旧政府が立ち直り国軍を組織する場合、
内戦に参加していた武装組織の内、その時の政府と敵対していないものは
政府指揮下の国軍に編入されることになり、

シリア自由軍も、現シリア政府が倒れて反政府派が勝った場合、
新議会の指揮下の軍事組織となり、そのまま国軍に編入される可能性が高いです。

現状でも、反政府派の議会組織「シリア国民連合」の下部組織という扱いで活動しています

では何故、ヒズボラは国軍に編入されないのか。
簡単です。
ヒズボラはあまりにも強力すぎます。国軍と正面から戦争できるのではないかと考えられているくらい強いんです
そして、ヒズボラが自由に動ける南レバノンは住民もヒズボラ支持者が多く、
更にその南にはイスラエルが居ます。

そして、そのイスラエルはレバノン侵攻でヒズボラに追い返されている。
国軍として統合することで既存のメンバーが抜けて、弱体化するとも言われており、
統合した場合再びイスラエルに対して不利な立場になります

結局、レバノン的にはヒズボラは放置すべき存在なのです。
国内で虐殺事件やら抗争やらも起こしません。起こしてるなら貧困層からの支持なんて集まるわけがありませんからね

武装組織は何かしらの問題を発生させて迷惑を振りまくことも多いのですが、
ヒズボラはそういうこともありません。
レバノン国内では「貧者の味方、天敵イスラエルに対抗しうる頼れる組織」みたいな扱いがなされているのかもしれません


くっそ、ヒズボラまだ終わんねぇ。
ちょっと短いけども今日はここまで。

次回「も」ヒズボラです。なんでここまで長いんだ…




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2014年2月24日月曜日

5分で分からないシリア紛争 組織紹介6 政府側組織ヒズブッラー

今回は政府側についた武装組織ヒズボラを解説していきましょう


ヒズブッラー(Hezbollah حزب الله‬‎)


ヒズブッラー、日本ではヒズボラと呼ばれますが発音的にはヒズブッラーのが近いそうです。
現地に行くことはない我々にはどうでもいいですけど。

アラビア語で「神の党」という意味を持つヒズボラはシリアの隣国レバノンの組織で、
レバノン内戦において発生したイスラエルのレバノン侵攻の時に結成された武装組織です。

レバノン内戦時は様々な組織が生まれ、色んな所から武装組織が流入してきました
ヒズボラは、そんなレバノン内最強の武装組織と言っても過言ではないでしょう
結成は1982年、イラン型のイスラム共和制国家をレバノンに建国することを目標としていました。

当然、イスラエルの侵攻を受けて作られた組織ですので、イスラエルは殲滅されるべき最大の敵です。
また、ヒズボラはイランの影響を強く受けて、というかイランが手を回して創りだした組織です
兵士の訓練もイラン軍が行っていますし、武器の提供も資金の提供もなされています
イラン政府対レバノン工作レバノン支部といっても問題ないくらいイランにべったりです

また、シリア政府もヒズボラに協力しており、補給拠点、訓練施設などを提供しているそうな
当然、シリア紛争でもシリア政府軍につくわけですよ

そして、レバノン内戦を鎮めるためという理由で米軍を中心とした多国籍軍がレバノンに入った際には
自爆テロを中心に多国籍軍に対しての攻撃を度々行いました

これからも分かるように、反欧米主義でもあります。ロシアや中国に対しての態度は分かりませんが、
イラン経由といえど彼らの武器を生み出しているのはその二国なので、悪い態度だとは到底思えません


2000年にイスラエルは南レバノンから出て行きましたが、
イスラエルを追い出したのはヒズボラだと言われています


レバノン内戦前のレバノン国軍ですらパレスチナ地域からイスラエル軍によって追い出され、
レバノン国内に侵入した武装組織を抑える力はなく、
政府も彼ら武装組織に自治権を認める有り様です
内戦に入ってからはほぼ壊滅したようなものですよ

結果、ヒズボラも今では国会に議席を持ち、ラジオと衛生テレビ局を持ち、社会開発計画を実施し、支持者が数十万人という組織に発展を遂げました
国軍がヘタレすぎるんですよ。仕方ないね

2006年には再びイスラエルがレバノンに侵攻しますが、
ヒズボラによって撃退されます。
この際、対戦車ミサイルによって数両のイスラエル軍戦車が破壊されています。
やたら装甲が厚いことに定評のあるメルカバなんですけどね

また、短射程と長射程のロケット弾も多数保有しており、
短射程の方を榴弾砲の代わりに運用しているフシがあります。
短射程と言っても最大射程は20km。榴弾砲とあまり変わりません

この手の榴弾砲の代わりになるロケット弾というやつは狙ったところに飛ばすものでなく、大まかなところに適当に大量に飛ばし、
面制圧を狙うものです。
但し、最近の米軍などが保有しているMLRSは違いますけど。

所謂、「カチューシャ」と言われる兵器ですね


「前線のカチューシャ」という替え歌と共にスターリンのオルガンを発射

このような兵器の他に超射程のロケット弾も保有しており、
こちらはイスラエル国内への攻撃を想定したものと思われます。
当然、提供元はイランと思われます。



ちょっとヒズボラも長くなりそうなんで今日はここまで。
ヒズボラは明らかに他の武装組織より強力なものです。

次回はヒズボラが他の武装組織とどのように違うかを解説していきます
多分、装備の話だけして実際シリアにどのような影響を与えているのかは更にその次になりそうですが・・・










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5分で分からないシリア紛争 組織紹介5 政府側組織編

なんか久々にシリア書いたかな
組織紹介も5つめ、政府側組織に入りました

今回の主役は当然、彼らです





シリア軍

Syrian Armed Forcesالقوات المسلحة العربية السورية)



ついに出てきました。今回の戦争の主役でもありますシリア軍、
このブログでは基本的に政府軍と呼んでいます

基本的な方針としては、レバノンやトルコに目を効かせつつ
、そして最大の敵であるイスラエルに対抗できる軍事力を保有するという方針で軍が運用されてきました

実際レバノンを占領してみたり色々してるんですけどねシリア軍
中東諸国の中ではかなり強い軍で、イスラエル、エジプト、シリアが中東3強で間違いないでしょう

1967年に第3次中東戦争が発生し、イスラエルと交戦するもゴラン高原を失い、
1976年にはレバノン内戦に介入して占領。

何だかんだでレバノンを占領していた期間、レバノンは安定していたようですが、
レバノンでもイスラエルと衝突を起こしています。
シリア最大の敵は間違いなくイスラエルでしょう。今までもこれからも

中東最強がほぼ確実と言われているイスラエルと敵対している以上、軍事で手を抜くわけにも行かず、
現在も徴兵制が敷かれています。18歳以上の男子に1年半から2年ほどの兵役義務があります。

陸軍は22万人で、内戦中に分離した自由シリア軍の構成員を引くと16万人くらいが残っているのでしょうか

去年のイギリの国際戦略研究所の分析資料によれば、兵力は半分程度に低下しているとのこと。





装備の質と内容

正規軍かつ中東でも強国と言われるシリアであるが、やはり兵器の質もそれ相応。
英語版Wikipediaから引用しますと、

まず軍の装備の質を測るのにちょうどいいのが歩兵主力装備。
AK系のライフルでほぼすべてを占めるらしく、
恐らく冷戦中を中有心にロシア・ソ連から購入したもので、
AK-74を中心に5.45*39mm弾を中心に運用していると思われます

この辺りは現在のロシア軍とあまり変わらないでしょう


そして主力戦車。
動画にもよく出てきますが、T-72の輸出モデルが中心のようです。
湾岸戦争の時に一方的にやられて、「ロシアが意図的に性能を下げてる」ともっぱらの噂となり
評判の悪いT-72輸出モデルですが、

現在シリアで運用されているものはロシア本国モデルとあまり変わらない性能があると見ていいでしょう。
シリア国内にロシア軍の施設がある程度には関係が良いですからね
冷戦時は兵器の販売も東側諸国に比べて優遇されていたようです

また、シリアで現在使われているものは全て爆発反応装甲を装備しており、
これらもロシアから購入したのではないかと考えられます


空軍もMig-29を中心に、イスラエルに対抗できる程度の装備を持っており
対空防衛網に関しては「米国の爆撃をしたところで大した効果はないのではないか」と言われるほど強力です。

海軍は内戦に関係ないので今回は省きます




まあ、全体的に評価すると、明らかにエジプト軍には劣りますし、
イスラエルには当然劣り、UAEとサウジアラビアも米国から装備を購入し、
かなり強力になっています。

正直、先ほど言った中東3強とは何だったのかと言いたくなるほど相対的に弱体化しています
特にソ連崩壊後の弱体化が酷いです。

しかし、周辺国との関係を考えると、イスラエル以外に対しては優位を保てる程の軍であることは間違いないでしょう。
イスラエルとて、シリアに侵攻した場合は苦戦する可能性が高いです。平時なら。
今の内戦状態なら違うんですけどね。

シリアの外交関係

では、実際シリアの外交関係はどうなっているのか確認しましょう

ロシアとは最新に近い兵器を購入できる仲です。
シリア内戦の話で政府側を支持するのも冷戦時代からの関係あってのものでしょうね

トルコとは、国境問題が在るようです。それでなくてもその国境付近にはクルド人問題もあるというのに…
軍事的敵対の過去はなく、シリア軍は南に偏っています

イスラエルとは、言うまでもなく最大の敵です。
恐らく、現政府が倒れて民主化したとしてもそれは変わらないでしょう







今日はこの辺りまで。
政府軍は今更特に書くこともないんですよね。
国内問題は既に紹介済み、沿革なんて書くとすっげー長くなるし。


次回は政府側に加担する国外武装組織、ヒズブッラーを中心に紹介しましょう


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2014年2月22日土曜日

久々の更新なんで好きな事を書いてみる 英国面:それゆけ後ろ向きに

えーと、多分一週間ぶりの更新です
本来の予定なら次はシリアの組織紹介で政府軍を紹介するところなんですが、
今日はとあるアニメを見て思い出した英国面について書きたいと思います

シリアの記事は毎回書くのに時間掛かるんで、土曜日の日中に書きます





さて、今日の英国面は「挑戦的な」という名前を与えられ、
新しい航空戦の時代を読み間違えてしまった英国製戦闘機のお話


その名前はBoulton Paul Defiant(ボールトンポール デファイアント


ボールトンポール デファイアント

ボールトンポール社が作った戦闘機なんですが、ちょっと変わっています
というか変わり者過ぎます。

この戦闘機の特徴、それは「後ろ向きにしか攻撃できないこと」にあります
正確には後ろ向きだけではないのですが、それに関してはこれから解説しましょう

時は1935年、
イギリス空軍は一次大戦で活躍したブリストルファイターの設計思想である、
旋回機銃を備えた単発(エンジンひとつ)複座(二人乗り)戦闘機」という仕様要求を出した。
要求仕様を完璧にこなしつつかなり早く完成させたため、デファイアント採用された
そう、要求仕様には合っていたのだ。

しかし、要求仕様が間違っていたのだ


旋回機銃、つまり後部機銃は普通大型かつ機動性の低い爆撃機や攻撃機に搭載されるが、
デファイアントは爆弾も積めず魚雷も載せられない。純粋な戦闘機である。

デファイアントの旋回機銃は、機体後方から上面、左右に対しては撃てるのですが機体の真正面には撃てないのです



1940年、ドイツとの戦争が始まりイギリス周辺海域での哨戒任務を実施し、
オランダ沖で敵の哨戒機を撃墜。
ダンケルク撤退にも参加して65機を撃墜するというかなり良い戦果を上げている。

これが何故かといえば、見た目が同じイギリス軍の戦闘機、ハリケーンに似ていたが故に
普通の戦闘機なら弱点である後ろにドイツ軍の戦闘機がついた所、
デファイアント後部機銃の餌食にされた。一番攻撃しやすい所なので落とされて当然である

ドイツ軍パイロットも、まさか戦闘機なのに後ろ向きに機銃がついてるとは思わなかっただろう

イギリス軍の戦闘機 ハリケーンMkI

後ろ向きに撃てる戦闘機」の話は程なくドイツ軍が知る所となり、その対策が考えられた
そして、出された結論は
敵機に対して正面から攻撃せよ」「真後ろにつかず、機体の腹を狙え
最早、戦闘機に対する攻撃法とはかけ離れていました

1940年の夏にはドイツ軍のイギリス本土上陸作戦であるアシカ作戦(ドイツ語読みでゼーレーヴェ作戦とも)の前段階として、ドイツ空軍による制空権の獲得のために、
ドイツ空軍をイギリスに派遣。所謂「バトル・オブ・ブリテン」が発生します

この時もデファイアントは使われたのですが、
この頃には前述の対策が知れ渡っており、1機も撃墜できずに出撃したうちの半数以上が撃墜されるという有り様

1940年の秋ごろには既に戦闘機としての仕事はなくなっていました。
地上で対空機銃として使ってたほうがよっぽど有益だと言われたとか


では、そもそも何故コンナモノを英国は作ってしまったのか

まず、元のコンセプトであるブリストルファイターを確認してみますと、
複座で旋回機銃がついた戦闘機であるところに違いはないのですが、
パイロットが使える固定武装を持つため、ブリストル・ファイターはなんと正面に攻撃できるのです!

しかも、一次大戦の頃の戦闘機は相対的に遅く、旋回機銃でも十分狙えるような速度でした。
(といってもブリストル・ファイターにおいては旋回機銃はオマケで、メインはパイロットの操作する正面固定の機銃でした)
それでもそれなりに狙えるため、ドイツの戦闘機にとっては脅威でした。

その上、機動力は普通の戦闘機と変わらず前にも後ろにも撃てるという恐るべき戦闘機だったのです

では、デファイアントはどうでしょう
一次大戦のような300馬力以下のエンジンなんて最早戦闘機では使われなくなり、
1000馬力以上が普通となり、機体の全金属化により7.7mm機銃1つでは敵機を撃墜するのは難しくなり、イギリス空軍でも7.7mmを8や12もつけるようになった
戦闘機自体の速度も200km前後から一気に500km前後まで上がった。

ブリストル・ファイターは他の戦闘機と変わらない機動力を持ち合わせていたが、

デファイアントは機銃を複数装備する関係上、旋回機銃に油圧ポンプが必要になったため、
同じエンジンを搭載する戦闘機に比べ1000kg近くも重くなり最高速度も低下、
しかも機銃でうまく狙うためには回避運動も出来ないため
敵からすれば当てやすいことこの上ない


英国は、古い思想で戦おうとしてしまったのかもしれません
その割には正面固定の機銃を付けなかったのが不思議ですが。





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2014年2月14日金曜日

2月14日はバレンタインデー。しかし、ここには女の子もチョコも実在しない。あるのは戦車だ!

ヴァーレンタイン?ああ、戦車のことね

そういう事を言う人は少なからずいるだろう。


え?どういう事か分からない?
ではそういう人たちのために偉大なる英国面の生み出した戦車を紹介しよう





Valentine Infantry Tank(バレンタイン歩兵戦車)



バレンタイン歩兵戦車


え?そもそも歩兵戦車が何だかわからないって?
戦車に歩兵を乗せる?ソ連じゃあるまいし、それじゃ2週間で死んじまうよ、歩兵が。
ではそこから説明しよう






世界初の戦車から受け継がれるドクトリン

学校の歴史の授業でも習うように、一次大戦は機関銃と塹壕の組み合わせによって
今までよりもはるかに防衛側が有利な状況になった。
いくら榴弾砲を撃ちこんでも退避壕(要は防空壕みたいな穴)に逃げ込まれて殆ど被害が発生せず、
歩兵を突っ込ませるために撃ちこむのをやめれば退避壕からわらわら出てきては機関銃を再配置し、歩兵を突っ込ませた頃には既に射撃可能。
あとは歩兵が穴あきになって・・・

それを数百万人分繰り返した頃、
とある発想が生まれた。
「機関銃が効かない鉄板を自走させてしまえ。」
そうして、世界初の戦車マークIが英国で誕生する。

Mk.I Tank



英国で生まれた戦車は、歩兵を随伴させて塹壕戦を突破することに特化していて、
歩兵と一緒に行動することが大前提であった。

そして一次大戦が終わり、イギリス軍は戦間期にとある議論が発生する
戦車は機動力を重視するべきか、防御力を重視するべきか。
結局、二次大戦に入る前に「それぞれ別の考え方を持った戦車を別々に作る」という選択をする
(戦車は騎兵科に属するか歩兵科に属するかの議論でもあったけど)

そして、英陸軍には歩兵戦車と巡航戦車の2つが生まれた。
歩兵の随伴を前提とし、装甲を重視、歩兵がついて来れないと意味が無いので低速でも構わないという設計の歩兵戦車

高い機動力と薄い装甲を持ち合わせた巡航戦車。
この2つに分けた。

そして、Ⅲつ目の歩兵戦車として生まれたのが
Mk.Ⅲ Valentine Infantry Tank。バレンタイン歩兵戦車である。
名前の由来は、開発関係者に「Valentine」という人がいたからとか、
設計の提出日が2月14日だったりだとか言われている

バレンタインの開発コンセプトは「新技術を使わず、小型の車体に必要な機能を詰め込んで大量生産に向いたもの」であった

一つ前の歩兵戦車、マチルダⅡに比べ装甲も薄く機動力も低いが、生産力だけは確実に勝っていた。

バレンタインの主砲は2ポンド砲。口径40mmで対戦車攻撃をするならより大口径な砲よりも有利。
但し、榴弾は使えないため、歩兵の脅威となる機関銃陣地等を破壊できないという
歩兵戦車として致命的な欠点ではあったが、
対戦車戦闘をするには割と都合のいい戦車であった。
「機動力さえあれば」



対戦車戦は機動力も相当に重要である。歩兵戦車は歩兵と同じ速度で動く。機動力なんて意図的に減らしているような戦車だ。
その機動力は16tの重さに対して135馬力。
チハたんこと、九七式中戦車ですら14tの車体に150馬力の発動機を載せています。
そんなバレンタインの最高速度は15km/h
九七式中戦車チハが38km/h

さらに、バレンタインは非舗装路(つまり道路でないところ)を走れば8km/hまで速度が落ちる。
いくら歩兵と同行するからといっても遅すぎである。

結局、大量生産という利点は、レンドリース法によってアメリカから送られてきた
M4シャーマン戦車に全てを持っていかれる。

それ相応の装甲と400馬力のエンジンによる38km/hの速力。
そして米国式チート生産力を最大限発揮する生産性。
榴弾砲も徹甲弾も使える75mm砲。
欠点があるとすれば航空機用星形エンジンを積むために車高が高くなったことくらい。
結局、バレンタインは目立たない位置に落ち着いてしまった。

それでも、特段問題があるわけでもなく「珍兵器」扱いはされていない。





「とある派生形を除いて」






その名はGap Jumping Tank。



まずは、画像を観てもらうことにしよう





「戦車が飛んでる!?」
かと思えば「なーんだ、ゲームの画像じゃないか」
と思ったそこのアナタ。
確かにこれがゲームの画像で、Gap Jumping Tankの実車は存在しない。

しかし、紛れも無く現実に計画され、実験まで行われた兵器なのだ
(証拠として、Wikipedia英語版に記述あり)



何故英陸軍はコンナモノを作ろうとしたのか。
自分で調べたところによると、どうも地雷原を「飛んで」超えるつもりだったらしい

「地雷撤去するのめんどくさいなー 時間かかるし戦車通せるようになるまで足止め食らうしなー
歩兵は通せても戦車は通せねえよなー」とでも思ってこういうものを考えたんでしょうか。

そして、実験。実験の方は写真が残っています。
それがコレ

偉大なる英国が生み出した傑作輸送車「ユニバーサルキャリア」にロケットを追加したもの。
戦車で実験する前に、これで実験したのだ。
そして結果























何故実験するまでに気づかなかったのか。
普通に考えて、飛行時の重量バランスを考えてない物を飛ばそうだなんてしたら
こうなるのは当然である

パンジャンドラムといい、コレといい、実験するまで分からないものなのだろうか本当に
これぞ英国面、というのを見せつけられた気がする









ちょっと別の話

最近、とあるアニメで英国面を感じたのでそれもまとめて書いてみる



とあるアニメには航空機が出てくるが、
その航空機というのがオスプレイに近い構造を持つ「ティルトウィング」の双発複座機なんですが、

その航空機というのには固定武装がついておらず、空中なのに後部座席からライフルで撃ちあう有り様。
演習だとはいえ一次大戦でもやってるつもりなんだろうか…
(あとはエアインテークの形からしてオーバーヒートしそうだとか永久機関とか色々突っ込みたいところはあるけど割愛)

まあ、それは練習機の話で戦闘機は違う…と心の底から願っていたもんなんですがね
現実は非情。戦闘機型も7.7mm機関銃っぽいのが後部座席に追加されてるだけで基本は一緒。

…アホか。二次大戦クラスの戦いを一次大戦の兵器でやるようなもんですよ
実際、後部機銃は一次大戦ではかなり有効なんですが、
そこから二倍近い速度での戦闘に変化した二次大戦には最早威嚇にしか使えなくなっていました


そのアニメの世界ではヘリコプターのほうが先に開発されたらしいんですが
(それに関しては竹トンボがある時点で、強力な発動機が開発されてしまえば確かに有り得るんですけどね)
それなら、ヘリコプター→固定翼機→ティルトローターという流れになるはずなんですがねぇ…
(機構の複雑さ的に)
しかも、2つのローターの回転を同調させる技術はあるくせに
数少ない固定翼戦闘機にはプロペラ同調機が付いてないと来た
基本的にほぼ同じ技術どころか、前提技術的に逆じゃないですかねぇ…


ミリタリー的、技術的に突っ込みどころは多々あるアニメ、某所では主人公が気持ち悪いと評判でした
これは面倒だから次回、とある英国面兵器と一緒に紹介しましょう


え?シリアを先にやれ?
政府軍はまだ調べてるんだ待ってくれ

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2014年2月11日火曜日

5分で分からないシリア紛争 組織紹介4

今回は反政府側を支持、支援している勢力、政府、組織です




アメリカ合衆国(United States of America

言わずと知れた世界最強の経済と軍事力をもつ国家。
2013年前半あたりから、非軍事的支援(食料や水、生活に必要な物資等)
を反政府側勢力及び、国外脱出した難民に送ってきましたが、

2013年の後半、化学兵器の使用が報告され、
米国....というかオバマ大統領は軍事介入を主張、
国連ではロシアと中国の反対もあって攻撃の正当性が確保できないこと、
国内の反対運動が激しいこと、ロシアと化学兵器を国連によって処理することで合意したこと
などの理由により軍事介入は回避されました。

何故アメリカ、というか大統領は介入するという選択肢をとったのか
特に利点がないかと思われますが、外交は信用が大事です。
といっても、普通の信用ではありません。
この場合は恐喝的な信用です。

例えば、北朝鮮が日々韓国に対してあーだこーだ言って、
無慈悲な鉄槌、無慈悲な懲罰と頻繁に言って韓国を脅そうとしますが、
既に狼少年。だれも聞く耳を持ちません

それに比べて、アメリカが「シリアの政府に対して無慈悲な鉄槌を下す」なんて言った日には
明らかに軍事介入を前提として、侵攻準備体制に入ったとか、
少なくとも何かしらの攻撃をしそうですよね
この違いです。

つまり、アメリカは今後化学兵器を使用した国に軍事介入できるよう、
軍事介入しようとした実績を作るわけです

そうすることにより、化学兵器を持つ国そのものも減り、世界中に
「化学兵器をアメリカに対して使うとヤバイ」と思わせることが出来ます

核兵器に関しても同様ですね。
イラクなど、核兵器が実際に見つからなかった国でも核開発を止めるための抑止力として
アメリカの戦争は今も機能しているわけです
当然、アフガンもアメリカに対してテロを起こすとどうなるかという前例になるはずです。
世界の警察は、未だに健在。しっかり機能しています。

最も、核開発に関して一番怪しいイスラエルを見て見ぬふりしてる時点で
公平かどうかといえば別の話になりますが。


グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)

長々と書きましたが要はイギリスです。
自分はイギリスと言うのがあまり好きでなく、UKやブリテンなどと呼ぶことが多いですね
シリアに対する外交政策や方針は基本的にアメリカと同じなので省略します。
イギリスもテロに悩まされてますからねぇ・・・




イスラエル:イスラエル国防軍(IDF)

シリアの南側に国境線を持ち、直接国境線で接する隣国です
1968年の中東戦争でイスラエル軍は当時シリア領土だったゴラン高原へ侵攻、
現在もゴラン高原にはイスラエル軍が駐留しています

(イスラエルの主張する)シリア国境線からは迫撃砲の音や銃撃音が聞こえるほど紛争が間近にある場所です。

1968年の中東戦争以来、というか以前からシリアとイスラエルは敵対関係にあります。
この敵対関係もあり、当然ながら反政府軍を支持しており、
アメリカとイギリスが軍事介入を検討した際に反対運動どころか国家全体で軍事介入を支持していた唯一の国家です。
但し、この場合の「国家」の場合自治区は含みません。
ユダヤ人国家の方が軍事介入を支持しました。

イスラエルは国家として唯一実際に攻撃を行っており、補給を潰すための空爆なんかを、
回数は少ないですが行っています




他の国家も非軍事的支援は行っているのですが、
特に目立ったものはないので割愛します


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5分で分からないシリア紛争 登場組織3

3日ぶりにシリアの解説に戻ります

今回は、国外から来た連中について解説。


ジハーディスト(Jihadist

日本語で言えば聖戦士ですね
起源は、恐らく、アルカーイダと同じくアフガンのムジャーヒディーンでしょう。
実際のところ、どっから湧いて出たのか分からん連中です。

イスラム圏の紛争地帯を渡り歩く傭兵、民兵のことをこう呼ぶことがあります
アルカーイダもそのジハーディストだと言われます
紛争や火種のあるところに行くのは変わりませんからね

彼らは本当に雑多な連中なので、意思、思想、目的様々です。
戦争が好きな者、殺人が好きな者、死のスリルを求める者
働くことも出来ず戦場しか生きる場所がない者

様々な連中が、紛争地帯には集まってきます
中には日本人も居ます。シリアに居るかは分かりませんが

彼らは反体制派につく事が殆どで、シリアでも反政府側についています
雑多な集団なので特に解説もいらないでしょう





今回はコイツラの紹介を忘れていたので記事が非常に短いです。
次回から扱うのは全く声質の違う集団ですし。
次は国外から支援だけしている政府や組織を紹介しましょう


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2014年2月9日日曜日

シリアの動画を解説付きで。5分でわかるIED

今日は反政府側に立つ、シリア国外の組織を紹介するつもりでしたが、
ちょっと時間が無いので動画紹介でもしようかなと思います





IEDと呼ばれる即席簡易爆弾によって政府軍の戦車が吹っ飛ぶ映像です
子どもたちの声が聞こえるすぐ近くで、戦車が吹っ飛ぶ。これがシリアの現状です
国外脱出による難民や、逆に政府軍が支配している首都周辺の地域に向かう難民も発生しています
彼ら難民の中には騒乱初期のデモに参加していた人々もいるでしょうが、こんな状況になってしまえばそりゃ安全な土地に移動しますよね

この動画で使われているIEDと言うのは、例えば
このような、地雷や榴弾砲の砲弾など、どんな爆発物でもいいので集めて、
何かしらの方法を用いて爆発させるものです

目的としては、地雷が欲しいが威力が足りない。
なのでワイヤーが抜けたら起爆する高威力地雷 とか
自動車に満載して戦車に運転手もろとも突っ込んで破壊するとか色々なものがありますが、
その中でも圧倒的に多いのが「携帯電話による遠隔爆破」です

上に上げた動画でも戦車が爆発した瞬間に携帯電話の音がしています
画像にあるような爆発物のケーブルを携帯電話につなぎ、爆発物にガムテープなどで括りつけて敵が通りそうな場所に設置しておきます
そして敵が近くまで来た時に爆発物に付けた携帯電話に電話をかける。
すると着信呼び出しのスピーカの回路から電気が流れ、信管に伝わって爆発するわけです
要はゲームでもよく見る「C4」とか呼ばれている遠隔爆破できるプラスチック爆弾の代用品というわけです


確かにシリアは戦場ですが、動画から分かるように同時に市民も生活しています
長年戦争が続くアフガンですら、携帯電話の電波は飛んでいるのです

このような場合に使われる使われる携帯電話は日本で使われるような高価なものではなく、
Nokia製を中心とした格安携帯電話が使われています。
通話さえ出来ればいい上、当然使い捨てで、
一度通話が出来りゃいいので新品の携帯電話とSIMカードも含めて2000円から3000円。
それでも勿体無いからと中古が使われることも。

当然の事ですが、この手の遠隔爆破方式を正規軍が使うことは”あまり”ありません
今の状態のシリア政府軍なら普通に使いそうですけど。
また、米軍などの先進国軍は、アフガン等で同様にIEDの被害が増加していて、
IED対策がされた専用車両や、電波妨害装置で対処しています


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2014年2月8日土曜日

2014ソチオリンピック開幕 でもテロをやたら警戒してるのはなんで? 5分で分かる?チェチェン紛争

さて、日本時間、今日午前3時にプーチン大統領によってソチオリンピックの開会が宣言されたわけですが、
やたらテロ対策に関する話題が上がり、それは日本にも伝わってきます
何故こうもテロが危惧されているのかといえば、チェチェン紛争が関係してきます

5分で分かるようにまとめますと

1991年 ソ連が衰退し始め、ソ連崩壊が現実味を帯び始める

ソ連を構成していた国々が独立し始める

ソ連崩壊。ロシア連邦の構成国、チェチェン共和国が民族問題が原因で独立を宣言

ロシア連邦の構成国であるためロシア政府は独立を認めず。チェチェンに軍を派遣

ソ連崩壊で弱体化していたロシア軍はチェチェン軍に苦戦。

決着がつかないまま双方は5年間の停戦に合意。ロシア軍撤退

1999年 チェチェンの独立強行派が隣国へ進行。一部の村を占領
同時に、モスクワでテロ事件が発生。数百名が死亡

ウラジーミル・プーチン首相(当時)は強いリーダー、強いロシアを掲げ国民の支持を獲得
チェチェン独立派によるテロ等に関して
「テロリストはトイレに追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる」
「例え便所に隠れていても息の根を止めてやる」と発言
チェチェンへ再度の軍派遣を主張し、国民の支持もあり実行される

今回に関しては劣勢のチェチェン独立派は、アルカーイダの協力を受けて攻撃がテロリズムへと変化していく

2009年。10年間の散発的戦闘とそれに続く掃討作戦により、独立派は掃討されたとロシア政府が発表
戦争終結宣言を出すものの、未だに度々戦闘が発生している

2009年の戦争終結宣言後もモスクワで列車を目標にしたテロが発生、
2010年には地下鉄、2011年には空港でもテロが発生
未だにチェチェンの武装勢力はテロという形でロシアに対して攻撃を加えている

といった流れです。


ここからは詳細な解説になります。
「詳細なんてどうでもいい、ソチでテロを警戒している理由を教えろ」という人は飛ばしてください


時は1991年。ソビエト連邦の構成国がいくつも離脱し始め、
東ヨーロッパではバルト三国やウクライナが独立。
同年4月にグルジア、8月にアゼルバイジャンが独立宣言。

年末にはソビエト国内でも「ソビエト連邦構成共和国離脱法」が整備され、
12月25日、ゴルバチョフ大統領の辞任を持ってソビエト連邦は崩壊。
ロシア連邦と独立国という形に変化しました

チェチェン共和国は、ロシア連邦でも南の方にある構成共和国で、
(意外と知らない人が多いかもしれませんが、ソ連だけでなく
ロシアも共和国の集合体として連邦制を取っています)

チェチェンの南にあるコーカサス山脈を超えると、そこは独立国グルジア。
元々イスラム教信者が多く、民族的にもロシアへの帰属意識が薄いチェチェンでも、
崩壊へと進むソ連の影響を受けて独立運動が発生。
1991年11月に「ソビエト連邦構成共和国離脱法」を根拠に独立宣言。
しかし、これはあくまで「ソビエト連邦」の構成共和国の独立に関する法律。
「ロシア連邦」の構成共和国であるチェチェン共和国はこの法律の適用外でした

ロシア連邦はこの独立宣言を認めず、治安維持部隊(内務省の組織というだけで実際は砲兵から戦闘ヘリまで抱えており、軍隊と変わりませんが)を投入。
しかし、チェチェン軍の反撃によって撤退を余儀なくされました

そこから3年過ぎて1994年12月。
ロシア最大の外貨獲得源である石油パイプラインの経路にチェチェンがあり、
独立によって外交的に不利な状況になると考え、
本格的な武力行使を開始。ロシア連邦軍をチェチェンに派遣します

しかし、ロシア軍はその数と装備によって圧倒していたはずが、
アフガン侵攻による疲弊から立ち直る間もなくソ連が崩壊、
ソ連崩壊は(アフガン侵攻による戦費も含めて)巨大な軍事予算によって引き起こされたと主張する人も多いように、
ソ連時代から削減された軍事予算によって運営されていたロシア連邦軍は弱体化していました
アフガン侵攻に参加した兵士たちはソ連崩壊までに解雇してしまったため、
チェチェンに投入されたのは徴兵されて間もない新兵がほとんどでした
それに対してチェチェン軍には旧ソ連出身者も多く、ロシア側の戦術や兵器を熟知し、

特に市街地戦は酷い有様で、装備の面で優位性を持つはずの戦車や装甲車が次々と破壊されていきました。
これは、ビルの上からRPG-7などの対戦車兵器をもつ歩兵に対して、
普通の戦車や装甲車は真上が狙えるようにはなっておらず、
むしろ真上は装甲が薄く、弱点になっているのです。
これに対してツングースカ等の真上が狙える自走対空機関砲を戦車に随伴させることで
大きな効果を上げましたが、それに気づいた頃には既に手遅れでした
(この教訓を反映させたのがBMP-Tだそうな

ソ連とアフガンで戦っていた聖戦士、ムジャーヒディーン達が集結、
特にビン=ラーディンを中心に集まった武装組織、アルカーイダがチェチェンに侵入。
「イスラム国を立ち上げるための聖戦に協力する」として、チェチェン軍と協力。

ソ連と長年戦ってきたムジャーヒディーン、というかアルカーイダはアフガンでも使っていた
ゲリラ戦を展開。ロシア軍は疲弊していきました

それでも兵器の有利を活かしてロシア軍は市街地以外の支配権を獲得。
市街地に対しては空爆で対処するも、市民も巻き添えにして国際社会から非難を受けます

結局、決定的な勝敗はつかぬまま1997年、休戦条約が結ばれ、第一次チェチェン紛争は終結
期間は5年だったはずなんですが・・・・


1999年。
チェチェン独立強硬派が隣国へ侵入、一部の村を占領した上、
ほぼ同時期にモスクワ市内でアパート爆破事件が発生
ウラジーミル・プーチン首相(当時)は強いリーダー、強いロシアを掲げ国民の支持を獲得しており、
チェチェン独立派によるテロ等について聞かれた際、
「テロリストはトイレに追い詰めて肥溜めにぶち込んでやる」
「例え便所に隠れていても息の根を止めてやる」と発言
(このセリフ、情報源がわからないんですが有名ですよね)
結局、ロシア政府はチェチェンへの空爆を開始。休戦協定は完全に無効になりました

チェチェン空爆は、弾道ミサイルや都市部爆撃を中心に行われ、
市街地戦闘の訓練も進んでいたことによって、チェチェン占領は順調に進んでいきました
アルカーイダ等の影響と、戦況が明らかに不利な状況もあって独立派の戦闘が、
ゲリラ戦からテロへの変化が始まります

テロ攻撃はチェチェン国内にとどまらず、モスクワなどのロシア本国でも発生しており、
一説には殺害された独立派武装勢力兵士の妻などが仇討ちのためにテロを起こしており、
組織としては「黒い未亡人」という組織があるとも言われています。
ただし、この組織は犯行声明などを出したことはなく、実在が確認されたこともありません

チェチェン全土を占領したロシア軍は、引き続いて独立派の掃討作戦を開始します
そんな中、北カフカース(コーカサス山脈の北側、つまり現ロシア連邦内)でイスラーム国歌の建設を目指す武装組織「カフカース首長国」という「自称国家」が誕生します

2009年、10年に渡る作戦によってロシア政府は独立派が掃討されたと発表
戦争終結宣言を出します。

しかし、宣言後もテロと散発的な戦闘は発生しており、
ロシア本国では
2009年の戦争終結宣言後もモスクワで列車を目標にしたテロが発生、
2010年には地下鉄、2011年には空港でテロが発生

これらのテロ攻撃も「カフカース首長国」または「黒い未亡人」によるものだと言われています


ここまでが、チェチェン紛争の解説です





では、何故ソチオリンピックでテロが起きるかもしれないのか。
まあここまでの解説で殆どの人達がわかってると思いますが、
恐らくロシア連邦に国際的な非難を集めることが目的と思われます
そんな事をしたらテロ組織も孤立無援になりそうですが。アルカーイダ系は支援するでしょうけど。
それでもカフカース首長国は去年7月、オリンピックを妨害すると宣言。テロを行うつもりなのかもしれません


そして、もうひとつの問題が。
まずはこの画像を見てください
中央左寄りにあるのがソチ 右のAのところがチェチェン


近っ!?
しかも、カフカース首長国を名乗る連中は、グルジアとの国境近くの山岳地帯に潜んでいると言われています
しかし、これでは縮尺と実際の距離は分からないですよね。実際の距離はー

こちらは道なりの距離。838km

こちらは直線距離。473km
近い・・・?
道なりの距離で比べれば、東京の日本橋から青森まで709km
フェリーも含めて、函館市の北側らへんで830km

直線距離なら東京から盛岡まで465km
近いのか遠いのか分かりませんが、紛争地帯と考えると近いのは嫌ですよね

何故こんなところでロシアはオリンピックをするのか。
おそらくテロを発生させないことで「独立派は既に掃討された もう居ない」と証明したいのでしょう
それでも、軍と警察合わせて7万人を派遣し
ソチへの人の出入りを全て監視しています(因みにソチの人口は44万人)

さて、実際何が起こるのかは分かりませんが、何も怒らずオリンピックが終わってほしいものですね




くうー・・・疲れました。これでチェチェンに関する記事は終了です
まさかここまで長い記事になるとは
簡単にまとめようとしてもこうなるんですかね

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2014年2月7日金曜日

5分で分からないシリア紛争 登場組織紹介2

今回は反政府組織としてアルカイーダ系とその他を紹介していきます


アル=カーイダ系武装組織

アルカーイダは、言わずと知れた国際テロ組織で、米国を標的としたテロをいくつも実行したとされます
一番有名なのは911同時多発テロです。

しかし、世界最大のテロ組織を生み出したのは米国自身だったりします
起源は1978年のソ連によるアフガニスタン侵攻まで遡ります
米国中央情報部がソ連の活動を妨害するため、
武器と装備を提供し、兵士を訓練しました。
こうしで出来たソ連に抵抗するための武装組織の総称は「ムジャーヒディーン」
(ムジャーヒディーンとはイスラム教上の聖戦を実行する人達の事です)

1989年、彼らはアフガニスタン国内からソ連を追い出すことに成功しましたが
武装組織は一つにまとまっているわけではありませんでした。
アフガニスタンは共通の敵を失ったムジャーヒディーン達による内戦が継続されました

アルカーイダ創始者とされるウサマ=ビン・ラーディンもムジャーヒディーンの一人でした。
しかし、1991年 湾岸戦争が始まると
イスラムの聖地であるメッカとメディナを領有するサウジアラビアが国内に米軍を置くことを認めたのです
聖地に異教徒の軍を受け入れるとは何事か と、その辺りから反米思想を持つようになります
他のムジャーヒディーン達も同様に反米意識を高めていきました

そうして、反米意識を持ったムジャーヒディーンが集まってできたのがアルカーイダです




武装組織を上げていくと、

アル=ヌスラ戦線

アレッポ市内で市民を拉致、市内の川で78人の死体が発見されたり等、
その他の自爆テロにも関与している組織のようです
アルカーイダの実質的なシリア支部で、構成員も殆どがシリア人です

イラクとシリアのイスラム国


元々アルカーイダと協力体制にある組織なんですが、
2014年に入ってからアルカーイダから絶縁を宣言され、ヌスラ戦線との戦闘も発生しています。
テロを行いながら政府軍と交戦しています。
構成員の殆どは周辺アラブ諸国などの外国人が主体です



アルカーイダ系は大まかににこの2つに別れています



どちらも、自由シリア軍と協力体制にあるんですが、
自由シリア軍との戦闘も発生しているそうです
偶発的なものなのかそうでないのかは知りません



次回は外国で反政府組織を支援している組織と国を紹介します


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5分で分からないシリア紛争2 登場組織紹介1

前回は5分で分かるようにーというか、和平交渉に至るまでの経緯をおおざっぱに書きましたが
今回からシリア紛争に関して詳細に解説していきたいと思います

今回はシリア騒乱に参加した組織に関して、一つづつ解説していきます
赤が反政府組織、青が政府側組織になります

反政府組織の面々

自由シリア軍(Free Syrian Army:FSA

前回も出てきた反政府武装勢力の中核組織
中心が軍から離反した連中とだけあって、それ相応の練度と装備を持ってます
さすがに戦車や航空機なんかは離反時に盗めなかったみたいですが、


政府軍から鹵獲した戦車を運用してたりします
戦車兵と整備兵の離反があれば、普通の軍と変わらない運用ができるはずです
(ちなみに、今後出てくる動画中に「アッラーフ・アクバル」ってよく言いますが、あのあたりの紛争だと攻撃する前、攻撃した後、攻撃が成功した、攻撃されたなど本当に色んな場面で言います
使い方的には「oh my god」に近いはず。意味は「神は偉大なり」だけど)

元軍だけでなく、武装した民間人 民兵も加わった組織で、
反対性武装組織の中心的な位置にあります


クルド人系武装組織


クルド人は独自の国家を持たない世界最大の民族集団で、世界で2000万から3000万と言われています
例えば、大和民族には日本が、朝鮮民族には北朝鮮と韓国が、ユダヤ民族にはイスラエルがあります。
しかし彼らは独自の国を持たない。持ったことはあるんですが、僅か11ヶ月でイラン政府軍から侵攻され、国は崩壊し、大統領は絞首刑にされました(マハバード共和国)
彼らの目標は独立国を持つこと。その一点になります。
シリア国内にも数百万人が住んでおり、主にその居住地域を武装組織が支配しています

現在、組織的な戦闘としては
クルド民主統一党 Democratic Union Party:PYD
の軍師組織である
 人民防衛隊 People's Protection Units:YPG 
が主に戦闘を行っています

YPGの武装部隊


同じ反政府勢力ではありますが自由シリア軍との戦闘も発生しています
理由は簡単、クルド人組織はあくまで自分たちの国を持つことが目標。
自由シリア軍の敵である政府軍に対して攻撃しないから といったものです

政府軍ともろくに戦わず、土地だけを持っていくクルド人武装組織。
これは戦後あーだこーだ言われそうですよねぇ…



次回はアルカイーダ系とその他の反政府組織を紹介します



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2014年2月5日水曜日

和平交渉が進むシリア紛争 しかし、何故こんな事に?   5分で分かるかもしれないシリア紛争

さて、最近シリアが色々と話題になりますが、このシリアで何故紛争が発生しているのかを、
できるだけ分かりやすく解説していきます

基本的なところをまとめていきますと以下の様になります





はじめに テスト投稿

広めるためのーとか言ってますが、
実際、採掘が厳しいのでMonacoinが欲しいだけです。

このブログでは、「ニュースに出てくるけど一体どういう経緯でそんな外交問題、紛争や内戦になってるのか分からない」といった人を対象に、
「5分で分かる!」ことを目標に現在起こっている内戦や紛争、外交問題に関する記事を書いていきます

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