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2014年5月5日月曜日

ちょっとオカルトじみた話「延々と続くブザー音 The Buzzer」

ロシアとウクライナの記事の途中ですが、
ちょっと面白い話を見かけたので記事にしてみようかと思います

最も、これもソ連やロシアに関わることなのですが。






世の中には、様々な周波数の電波が飛んでいます


我々が普段使う携帯電話の電波は700-2000MHzという波長の短い電波を使い、
テレビ放送や無線LANと言った身近で電波を用いる機器は大体この領域を使用します
「UHF」と言われる領域です

これは、波長が短いためにアンテナを小さく出来、
波長がこれ以上短すぎると電波の直進性が高すぎて遮蔽物の裏などに電波が届かず、
移動体通信等の用途には向かないことが原因です。

このため、電波帯域の中で一番人気のある領域であり、
「電波の帯域は有限な資源だ」などという主張は、実用で最も価値のある電波帯がこの領域に集中してるため言われることです。

テレビ放送がアナログからデジタルになったのも、
データの効率を向上させることでテレビ放送で使用している領域を圧縮し
他の用途に電波を利用するためです。
(だったらNOTTVなんて誰得な赤字サービスはやめて欲しいもんですが、300MHz以下は使うのが難しいのも事実です)


で、今回の話は「短波放送」に関するものです
短波というのは波長が(UHFに比べて)長いため、アンテナが大きくなってしまうという特徴があります。
短波よりさらに波長の長いAMラジオ放送を受診するためにはFM放送よりも大きな受信機が必要なため、
携帯電話や音楽プレイヤーにFM放送の受信機能はあってもAMラジオ放送の受信機能が無いのはこの辺りに理由があります。


さて、AM放送もそうなのですが、短波放送にはとある特徴がありまして
それは、『電離層で反射する』というものです
MFに相当するのが日本のAMラジオ放送 昼間は反射しない
この特徴、昼と夜で反射する周波数などが変わってくるのですがその辺りは割愛します
とにかく、この特徴を利用して短波を大気に反射させることにより、
遠くでも短波放送を受信することが出来るわけです

最も、距離や気温、日照、太陽の活動等、電波放射角によって受信可能地域は変わりますが。

この「遠くでも聞ける」という特徴を利用して、
20世紀から国際放送で利用されてきました。
日本でもNHKが国際放送を短波で行っています。

また、この短波による国際放送を受信する「BCL」が流行ったこともあるそうです
近頃は受信するためのラジオそのものがあまり売っていないそうですが。



冷戦時代は西側諸国からの情報を短波放送で送ったため、
東側の人は短波ラジオを持っているだけでNKVD(秘密警察)が家に来る。ということもあったようです

逆に、ソ連などの東側諸国からも革命的、共産主義的な情報を送信するため、盛んに短波放送が行われていました。
東側の音楽を聞くために短波放送を聞いていた人も居たみたいですね

現在でも、情報封鎖が行われている北朝鮮に対してニュースを届けるため、
朝鮮語放送が韓国から、
日本国内では、拉致被害者向け日本語放送「しおかぜ」「ふるさとの風」が行われています。
北朝鮮国内ではジャミングされて聞けないことが多々あるようですが。





さて、前置きが長くなりましたが
今回の話のメインはとある放送局に関するものです。

その放送局のコールサインは「UVB-76」
周波数は4625KHz

正式な放送局の名称は不明ながら、「The Buzzer(ザ・ブザー)」という愛称があります
この愛称は短波放送の内容に由来するもので、
その内容というのが

(動画に表示されている画像は電波を発している施設の航空写真です)
あと、視聴注意。機械的ですが結構不気味なので。


これです、このブザーをほぼ1日中発していて一日50分間点検のために停止する以外は
常にブザーを鳴らし続けているのです。

これが「ザ・ブザー」の由来です。
1982年から2秒おきに電子音を放送していたのですが、1990年に動画のブザー音に切り替わったそうです。

そして、この放送は1982年から現在、2014年までの32年間
今でも続けられています。



UVB-76を放送していた施設


この不気味な放送、なんの為に使われているのかという議論が昔から(主にネットで)
繰り返されてきました。

電波の受信方向から電波を発している施設の場所は特定できたものの、
軍の施設であるため当然入ることは出来ず、
その外観と放送内容、周波数から様々な説が出てきました

1:ある種のデッドマン装置のような、設備の障害検知用の生存信号ではないか

つまり、装置設備が正常に作動している間だけブザーが鳴り続け
ブザーが止まれば動作に何らかの問題が発生したということが分かるというものです

実際、この放送はマイクに何かの装置が発している音声をマイクが拾っていることが分かっています
(根拠は、会話音がブザーの後ろから聞こえてくることがまれにあるため
会話内容はノイズと一体化しているため不明。)

同様に(施設がモスクワに近いため)
「旧ソ連全土に対するモスクワの生存信号で、72時間以上途切れた場合は所定の目標に核攻撃を行う」という説も出てきました

2:電離層の反射状態から地震や地下核実験等を検出する

先にも書いたように、短波は電離層で反射する特性を持っており、
気温、日照、周波数によって反射が変化してくるので
それを観測することによって電離層の状態を把握することが出来るのです

また、地震が起こる際は電離層の状態が大きく変化することが知られています
(そのせいか米国の電離層観測・研究施設HAARPが電離層に影響を与え、
意図的、人工的に地震を発生させているという陰謀論が存在する)
HARRPのアンテナアレイ



更に、地下核実験を行った際も電磁パルスによって電離層が変化することが知られており
これらを検出するためとも言われていた
(この電磁パルスを逆手に取ったのが核兵器の運用法の一つ、EMPである)


しかし、ブザー以外が放送されたことによって他の説が出てきました

3:国外のスパイ向け乱数放送である

短波ラジオというのは長い間、国外のスパイに対する暗号通信の手段として用いられてきました。
これは、軍で用いられる暗号と同様、乱数表を手元に持っている人間にだけ放送の内容を理解できるもので、
一方的な情報送信でいいならば、情報送受信時に対象国の防諜に気づかれにくいため
一番安全な手段といえるでしょう。
電波を双方で送り合っていれば(長距離で電波を贈り合うならば大規模な設備が必要なため)
見つかりやすいですが、
ラジオを受信する人の中からスパイを見つけるのは非常に難しいのです

冷戦中の乱数放送は数多く行われ、乱数放送を受信していたとして逮捕された人も居ます。
これは西側での事で、乱数表を持っていたためスパイとして拘束されました

割と最近、かつ日本で有名な例としては「大韓航空機爆破事件」の犯人、
金賢姫が北朝鮮からの支持を短波放送で受け取っていたという話があります

現在でも北朝鮮、韓国、中国、台湾の乱数放送を日本で聞くことが出来ます。
最も、The Buzzerのように常に放送しているわけではないので録音していないとまともに聞けませんが。
(The Buzzerはアンテナと電離層次第で日本でも聞けます)


この説を補強するように、1997年には乱数放送によく似たメッセージが放送されました

≪Ya - UVB-76.
18008.
BROMAL: Boris, Roman, Olga, Mikhail, Anna, Larisa.
742, 799, 14.≫

これらの放送内容は乱数放送に酷似しています。

この後、2002年、2006年、2010年にメッセージを放送しました
2010年の放送。当然内容は意味不明。

2010年のメッセージの後、The Buzzerはしばらく放送を停止します。
この間に放送局が移動したらしく、

以前のように巨大なアンテナなどの施設が無くなったため、
大まかな位置は受信方向から予測されているものの、
どの建物で行われているかというのは移転後3年経った現在も分かっていません


また、この移転時期はロシア連邦軍の軍管区再編及び予算圧縮のための国防体制見直しによる
部隊の配置転換の時期と重なっており、用途が少しづつ見えてきていました

2011年にはUVB-76を放送していた古い施設が遺棄されていたため、
探索が行われました

探索をした彼らは軍事施設であると主張し、
無線放送記録も見つかったそうである。

しかし、やはり実際の詳細な用途に関する記録などは発見されなかったそうです
そりゃ引っ越しの時に機密に関するものを残していくとは思えませんしね

因みに、2010年に引っ越した後、
数十秒ながら音楽が流れたり、技術者の会話が流れたり、
謎の電話による会話が30分近く垂れ流されたりしてます。

引っ越しした時に色々ドジっちゃったみたいです。
なんか未知による恐怖感が削がれますよね。


その後、2012年、2013年にもメッセージは放送され

そして今年に入るとメッセージ放送の回数が異様に増え、
最近も月に1-2回の頻度でメッセージが送信されています。

最近ウクライナ周りで起きていることを考えると用途が透けて見えますね…


かつては秘密と未知と不気味さによって人々の興味を引きましたが、
それもすでに過去なのでした。

クリミアのロシア連邦に参加するための住民投票を行った日に変わった放送が行われたって辺りにも色々と見えてきますね

個人的にはロシア連邦軍の西部軍管区や南部軍管区の
工作員又は部隊に対する放送だと考えています。

ただ、それだとブザーを鳴らし続ける理由が分からないんですよねえ…
英語圏を探せばもっと情報があるでしょうけど流石に時間がかかりすぎるのでやめておきます


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