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2014年7月15日火曜日

小ネタ:戦車/装甲車/自走砲



久々の更新ですが小ネタです
イスラエル周りがまた温まってきたのであの辺りで何か書こうとも思ったのですが、
何故イスラエルの存在が問題なのか
なんて話を書いてたらウクライナより長くなります。事は紀元前から始まりますからね

今回は1回きりで済む小ネタです。




さて、「戦車」というのは何でしょうか?
「戦う車」と言う人も居ます
文字通りの意味ですし、広義の意味では合っています。
しかし、その範囲では全然違う特性の兵器も全てひっくるめて「戦車」になってしまいます

それこそ、馬車たる戦車「チャリオット」から
日本製の信頼性が生み出した民兵用移動機関銃座「テクニカル」、
ヘタしたら自転車に機関銃を固定するだけで「戦車」に含まれることになります

アフガニスタンの軍事警備会社が使用している「トヨタ・ハイラックス」テクニカル
テクニカルとはこのように、トラックの荷台に機関銃等を固定したものである

チャドでの内戦、「トヨタ戦争」で使われた「トヨタ・ランドクルーザー」
双方の勢力がトヨタの車両を用いた所から「Toyota War」と呼ばれるようになった


復元された「馬車たる戦車」 チャリオット
チャリ(オット)で来た。



二次大戦の一般的な戦車 M4シャーマン


実のところ、戦車の定義は時代によって異なり、曖昧です。

古代の馬車たるチャリオットは別として、

歴史の教科書にも出てくる一次大戦に登場した世界初の菱型戦車「マークI」の頃は、
戦う自動車なんて他に居なかったので「戦う車」こそ戦車でした
世界初の戦車 マークI

一次大戦中にも戦車は進化していき、様々な用途が生まれました。
二次大戦には歩兵や戦車と戦う軽戦車、中戦車、重戦車などの分類だけでなく、
戦車と名のつくものは駆逐戦車、騎兵戦車、巡航戦車、歩兵戦車、偵察戦車、指揮戦車、火炎放射戦車、対空戦車、架橋戦車、回収戦車などが生まれ

我らが九七式中戦車「チハ」
対歩兵戦闘を想定して作られているため対戦車戦闘にはめっぽう弱い
しかし、当時の日本陸軍のドクトリンではそれで十分だった
ドイツ軍の重戦車、Ⅵ号戦車「ティーガーI」
恐らく世界一有名な重戦車。対戦車戦闘では非常に強い

それ以外にも、「戦う車」として自走榴弾砲、自走対空砲、戦車駆逐車、突撃砲、
装甲歩兵輸送車、汎用輸送車、ガントラック、武装ジープ等など、
戦場は様々な種類の自動車が駆け回っていたのです。

この頃の戦車の定義は曖昧でした。
結局この時代の戦車は運用している軍が「これは戦車だ!」と主張すれば戦車なのです。


ユニバーサルキャリア/ブレンガンキャリア
イギリスの汎用輸送車 歩兵や物資、機関銃だけでなく
対戦車砲載せてみたり、迫撃砲載せてみたり、火炎放射器載せたり、
果てには空飛ぶ戦車の実験としてロケット載せたりしている

二次大戦が終わると増えすぎた戦車の仕分けが始まります
火炎放射戦車と駆逐戦車は種別廃止、
偵察戦車、空挺戦車と軽戦車は戦車以外の装甲車に役割が割り当てられ
中戦車と重戦車は種別を統合して「主力戦車」に生まれ変わります。

戦後から現代にかけては戦車とそれ以外の区別が割とはっきりしてきます。

戦車は「主力戦車」に相当する車両のみが戦車と呼ばれるようになり、
その定義はおおまかに
「同世代の戦車の攻撃に耐えられる装甲を持つ事を目標とし、あらゆる地上戦力と交戦可能である」
先ほど書いた内容と意味的には全く変わりませんが、戦後になって例外は大分減り、
分類しやすくなりました。

例えば、「同世代の戦車の攻撃に耐えられる持つ事を目標とし」の部分が欠けていた場合は
「戦車駆逐車」または「装輪戦車」という分類になります。(駆逐戦車とは異なります)

自衛隊の10式戦車
装軌(キャラピラ)で、同世代戦車を撃破するのに十分な火力がある120mm砲を搭載し、
軽量化しつつも同世代戦車と変わらない装甲を実現している。
防衛省が開発中の「機動戦闘車」(MCV)
この種の「装甲薄いけど火力は戦車に近い」
という種類の車両は呼称が決まっておらず、「戦車駆逐車」「とも「装輪戦車」とも言われる
(場合によってはこれを自走砲に分類することも)


現代の戦車は「主力戦車」こそが戦車であって、それ以外は戦車ではありません
では、「それ以外」の「戦う車」とは何なのでしょうか

一番代表的な存在としては自走砲と、装甲歩兵輸送車があるでしょう。





戦後、リストラされた軽戦車は輸送車と統合され、「装甲歩兵輸送車」 APCや「歩兵戦闘車」 IFVへと変化します
米軍のAPC M113
「戦場のタクシー」とも呼ばれ、
この種の車両の運命かのように対空・対洗車ミサイルや迫撃砲、
軽戦車の砲塔を載せられたり色々な改造を受けた
米軍のIFV M2ブラッドレー
戦車に似たスタイルのため戦車と間違われることも

自衛隊のIFV 89式装甲戦闘車
生産数が少ないため戦車より高い車両。
こちらも戦車に間違われる事がある




ソビエトのBMP-1
歩兵を輸送しながら敵のAPCを破壊でき、
対戦車ミサイルを使えば戦車すら撃破できるというIFVのコンセプトは
西側諸国に衝撃を与え、その後先進各国はIFVの開発を急いだ

しかしながら、このAPCとIFVという2つの装甲車の種別は基本的に
「装甲された車内に歩兵を搭載する」という点で被っています。

APCは歩兵を搭載し輸送。歩兵のライフル程度に耐えられる装甲を持ち機関銃を搭載するもの

IFVは歩兵を搭載し、積極的に敵の歩兵や装甲車を攻撃し歩兵を支援するために、
ある程度の機関砲や対戦車兵器に耐えうる装甲を持った物
という性格で分かれており、

一番わかり易いものでは「20mm以下の機関銃を搭載するものがAPC、20mm以上の機関砲を搭載するのがIFV」
という分類が出来上がっています。
20mmというのは炸裂弾が使用可能になる口径であるため、
積極的に歩兵を攻撃するならばそちらのほうが都合がいいためです。

しかし、これだとまだ問題があります
APCやIFVの中には武装が違う派生型が複数ある場合があり、
車体が同じで砲塔が違うものはどう分類すべきかという問題があります

個人的には、(ゲームにおいて、武装で脅威度が大きく変わるので)
20mm以上の機関砲を搭載していればそれは車体が何だろうがIFVだと考えています
BTR-80
KPVT 14.5mm機関銃を搭載しているため
個人的にはAPCに分類




BTR-80A
2A72 30mm機関砲を搭載しているため
個人的にはIFVに分類

(APCとIFVの分類を運用上、戦車に随伴した場合に、
隊形を維持したまま戦闘するか、地形に隠れて戦うかという点で分類する方法もある模様。
多分こっちのが正しいですが、運用まで想定して分類すると色々面倒なのでパス)


また、APC、IFVに近い存在として装甲偵察戦闘車(RCV)なるものが存在します
これらは、APCやIFVを改造して作られる物も多く、また武装にもばらつきがあります

また、偵察車と言いながら実際の運用はかつての軽戦車と同じような歩兵支援を行っていたりします

ドイツ軍の「フェネック」偵察車
隠密偵察型の車両で、武装、装甲も威力偵察型の車両に比べれば貧弱である


自衛隊の87式偵察警戒車
威力偵察型の車両で、対歩兵、非装甲目標との交戦に十分な武装と装甲を備える


英軍のFV107「シミター」
軽戦車的性格が強い車両で、戦車としてみればちっこくてかわいい

もう一つ、自走砲というのはその名の通り「自走する砲」です
そんなこと言ったら戦車も戦車砲が自走するものになってしまいますが
戦車は開発された時から自走するものなので、それに搭載する戦車砲が自走した所で自走砲には含まれません
(実際は戦車砲が自走する「駆逐戦車」「突撃砲」というものもありますが)


自走砲に含まれるのは、本来「自走しない砲が自走するもの」に限られます

自走しない砲と言うのはつまるところ榴弾砲で、これにエンジンとハンドルと、
ライフル程度の攻撃に耐えられる装甲を備えればそれは立派な自走砲です
(自衛隊には装甲なしの自走砲もありますが)

自衛隊の「自走しない榴弾砲」 FH70
自走できないので、普通は画像のようにトラックなどで牽引し移動する

本来なら「自走しない榴弾砲」に分類されるはずが、
FH70にはエンジンが搭載されているため実は自走できる。
しかし、長距離を移動することは出来ず、せいぜい陣地転換に使う程度

自衛隊の203mm自走榴弾砲
でかい、そして装甲がない。近いうちに引退するらしい



自衛隊の99式自走155mm榴弾砲
現代の標準的な自走砲
装甲があり、IFVの車体を流用したものに載せて自走する。
これらの自走榴弾砲は戦車と似ている(軍事に詳しくない人的には)ため、
戦車と間違われる事がありますが、
戦車は先述の通り「敵戦車の攻撃に耐えうる装甲を持つ」
ことが求められるため、装甲が薄い自走榴弾砲は戦車とは異なります。

戦車は最前線で敵を目視し直接照準で射撃するのに対し、
自走榴弾砲はその後方で味方からの観測情報を元に見えないところに対して攻撃するので
攻撃されるリスクは戦車に比べれば少なく、重装甲である意味はあまりないのです


また、自走砲には榴弾砲だけでなく迫撃砲も含まれます

重迫撃砲も榴弾砲に比べれば軽量とはいえ、それでも200kg以上あるので普通は車両で牽引する。
しかし、重迫撃砲も牽引せず車両に搭載することですぐに移動ができるようになっているものもあります


自衛隊の120mmRT迫撃砲
木箱に砲弾が入っており、迫撃砲はこのような車両に牽引されて移動する

自衛隊の96式自走120mm迫撃砲
これも自走砲に含まれる。後ろから突き出ているのが迫撃砲本体である
米軍のM1129「ストライカーMC」
こちらはAPCをベースに迫撃砲を搭載したもの。
迫撃砲も定義上は自走砲とされますが、その運用は自走榴弾砲とは異なり、
前者は砲兵部隊として独立して動きますが、迫撃砲は歩兵部隊によって運用され、
歩兵部隊についていく存在です。



さて、ここまで書いてきた分類をまとめますと、以下のようになります

戦車(主力戦車/MBT)

装甲:同世代の戦車の攻撃に耐えうる。
武装:大口径の戦車砲を装備し、直接標的を見て射撃する
その他:あらゆる地上戦力より強力な装甲と貫通力に優れた主砲、高い機動性を兼ね備える

装甲歩兵輸送車(APC)

装甲:歩兵のライフルによる攻撃に耐えうる
武装:歩兵を攻撃するのに十分な機関銃
その他:歩兵を数名搭載し輸送することが目的 戦闘への参加は消極的

歩兵戦闘車(IFV)

装甲:戦車には劣るものの、機関砲や一部の対戦車兵器に耐えうる
武装:20mm以上の機関砲を搭載
その他:歩兵を搭載するが戦闘に積極的に参加する

偵察戦闘車(RCV)
装甲:IFVに近いものとAPCに近いものに分けられる
武装:20mm以上の機関砲を搭載する事が多いが、それ以下のことも
その他:歩兵は搭載せず、軽戦車的な運用も行われることもある

自走砲(SPG)
装甲:APC同様、歩兵の攻撃に耐えうる程度
武装:大口径の榴弾砲または迫撃砲を搭載
その他:APCを改造して迫撃砲を載せたものもある

現代の装甲車というのは、上記の5つのうち、基本的にどれかに分類されます
(戦闘に全く参加しない支援車両は含まれない)
(この分類は個人的な考えに基づくものです)

また、ベースになる車両が同じでも改造と運用次第で分類が変わることがあります
(例、BTR-80とBTR-80A 機動砲システムや自走迫撃砲を含むストライカーファミリーなど)


装甲車を見かけたら、ひとくくりに戦車と言わずにどれかに分類してあげましょう。




一ヶ月ぶりの記事更新でした。
ネタが思いつかないから書けないんですよね
時間もなかったんですが。

しかし、書いてる途中にいくらかネタを思いつきました。
次から単発ネタを何本か書いていきます

そうそう、結構な間放置していましたがそれでも一日あたり30PVくらい出るんですよね
何故なんでしょうか 分かりませんが。

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