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2014年4月8日火曜日

英国面:おもちゃの対戦車迫撃砲

さて、前回まで迫撃砲に関して解説していたわけですが、
迫撃砲の中でも「スピガットモーター」と呼ばれる分類があります。
日本語で「差し込み式迫撃砲」といった感じです
典型的な「スピガットモーター」 砲口よりも弾頭が太いのが特徴
普通の迫撃砲よりも弾頭を安価に製造できてるため、一次大戦の内は使われてた訳ですが

普通の迫撃砲よりも弾頭が重く、速射性に乏しいため2次大戦頃には使い方が限定され始め、
いくつかの派生型を残して二次大戦後にはほぼ無くなってしまったわけです

その派生というのの一つが、「対潜迫撃砲」
対潜迫撃砲の代表的存在 英国の「ヘッジホッグ」

爆雷投射機よりさらに広範囲にばら撒き、進行方向正面に対しても投射出来ます。
ロシア軍では現在でも対潜迫撃砲を搭載しているようです

もう一つは、「ライフルグレネード」
M1ガーランドに22mライフルグレネードを装填
空砲を装填し、銃口からグレネードを差し込むことで使えるタイプのグレネードランチャーで
現代でも使われており、自衛隊は2006年に新たなライフルグレネードを採用しています
06式小銃てき弾

さて、話は変わりまして、時は二次大戦。

HEATの開発によって携行型対戦車兵器が進歩してきたころ
(HEATの解説は長くなるのでまた今度しましょう)

アメリカはバズーカ、ドイツはパンツァーシュレックとパンツァーファウストを開発して
歩兵による対戦車攻撃が今まで以上に容易になりました

M1バズーカ 
本来「バズーカ」と呼ばれるのはこの兵器の派生型のみ

                       
上がパンツァーファウスト
下がパンツァーシュレック

これらは、「HEAT」という仕組みを持った榴弾を敵戦車にぶつけるためのものですが、
英国でも同じように歩兵が戦車を攻撃できる兵器を作りました

それが「PIAT」である
PIAT
PIATは他国の対戦車兵器のように「無反動砲」や「ロケットランチャー」ではない。
PIATはスピガットモーター。迫撃砲なのだ




また、PIAT最大の特徴としては発射装薬を最小限に抑えるため、
弾体を発射するために「バネ」を用いていることにある





そう。バネを使用している。


別に閉鎖機構がどうとかファイアリングピンがどうとか言うわけではない。
純粋に、そして単純明快に「弾を発射するために」バネを使うバネ砲なのだ
砲身の中が見える状態のもの
巨大なバネが詰まっていることが分かる
実際には弾体に普通の迫撃砲と同じように発射薬は入っているのですがそれはあくまで補助的なもので反動を用いてバネを圧縮することで連続射撃を可能にしています

この機構を採用したことによって、
他の対戦車兵器では出来なかった「室内からの射撃」を可能にしています

B-10無反動砲を室内で射撃。SPGは室内射撃可能だが部屋が真っ白になる

ロケットランチャーや無反動砲は砲の後方に排気するため、この排気の熱で火傷したり、
衝撃で気絶したりすることがあるのです
後方確認せずにRPG-7を撃つとこうなる

それに比べてPIATは迫撃砲なので後方への排気もなく、
主にバネが使われるので煙も出ないので場所がバレにくいという利点がありました。

最も、建物の二階から撃とうとPIATを下に傾けると弾体が落ちますが。
射程は大体100m この頃の対戦車兵器としては十分なものだと思われます

因みに、最初使うときには必ずバネを縮める必要があったのですが、
バネを縮める際に背骨を痛める兵も多かったとか…

次回は、面白い作品を見つけたので対戦車兵器の進化とHEATの話でもしましょう。
お楽しみに。ハハッ

Monacoin:MSmPH9ptv8Vp8N3JMjFCgQ25ucXv3xKTAo

2014年4月1日火曜日

英国面:命尽きるまで核兵器を守る

核兵器というと、弾道ミサイルに載せた戦略核兵器を思い浮かべる方が多いと思いますが、
核兵器は何もミサイルだけに積むものでは有りません。

少なくとも、20世紀では。



世の中の核兵器は大きく分けて2つに分けられます
一つは「戦略核兵器」
ICBM、大陸間弾道ミサイルやSLBM 潜水艦発射弾道ミサイルに搭載されている核弾頭なんかは
全て戦略核兵器という扱いになります。

戦略核兵器は戦略目標を達成するために使用され、
戦場ではなく戦場より後方の地域で使われることが多いです

例えば、都市部や発電所、その他のインフラへの攻撃に用いて相手の国力と生産力を削る事で継戦能力を低下させたり
敵が反撃する前に敵の核戦力を撃破し無力化させるために使われます
潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」



500km以上の射程を持つものが戦略核兵器とされるそうですが、
威力や運用法によってはそうでない事も有ります。
分類が曖昧な核兵器に関しては実際の使い方次第ですね

もう一つは「戦術核兵器」
中短距離の弾道ミサイルや米軍が現在も配備している核爆弾(B61 B83など)がこれに当たります
現在も配備されている米軍のB61核爆弾

こちらは戦術目標を達成するために
戦場で敵の兵士等の戦力、前線指揮系統を撃破、混乱させるために使われます

味方まで巻き込まないように戦略核兵器よりも低威力で、B83などは搭載前に威力を調整できます

戦略核兵器は弾道ミサイルに留まらず、
巡航ミサイルや航空機爆弾、核魚雷、核砲弾、核地雷など様々なタイプが有ります

核兵器はその重さに比べて高威力で、
ソ連が物量作戦で押してきた際に待ちぶせ迎撃を行ったり
逆に侵攻前に砲撃を行うことで敵戦力を殲滅して進軍するという事を想定して
戦術核兵器は開発、配備されていきました


米軍のM65カノン砲によるW9核砲弾の射撃実験
1953年5月25日 ネヴァダ砂漠にて
この頃は残留放射線や放射線の人体に対する影響がまだあまり分かっておらず、
この砲撃の後に砲撃した地点に歩兵を徒歩で前進させるつもりであった。

元の記録映像にはこのカノン砲発射するために時限装置を仕掛けた後、近くの塹壕に入るところまで記録されている。
爆風さえ凌げればそのまま爆心地まで徒歩で移動するつもりだったのだろう

因みにこのW9核砲弾は広島に落とされた「リトルボーイ」とほぼ同威力だそうです


さて、今回の本題はとある戦術核兵器の話です



時は1950年代。ソ連がいつ攻めてくるかも分からなかった西ドイツにおいて、
ソ連の物量作戦に対抗しうる戦術核兵器が計画されました。


それは、「核地雷」でした。

地雷と言ってもセンサーなどで起爆するのではなく、
あらかじめ埋めておいて遠隔操作か時限装置で起爆するものでした。

大量破壊と放射性降下物を発生させることでドイツにおけるソ連軍の侵攻速度を遅くしようと考えたのです。
「イギリスが」

つまり、イギリスはドイツに核兵器を埋めようとしたのです。
しかも、「西ドイツに秘密で」

当事国に秘密で核兵器を秘密裏に西ドイツに埋めてしまおうと考えたのです
当然、バレた時の外交的リスクは計り知れません。


さて、話はちょっと変わりまして、
電子機器のバッテリーというやつは低温では動作不良を起こすもので、

極端な例ではありますが
火星探査機「オポチュニティ」は2010年、冬季に入り太陽光発電パネルの発電量が低下する時期に太陽の方向(南半球だったのでこの場合は北)を向くことに失敗し、
-100度という極寒をヒーター無しで耐え切ることが出来ず通信が途絶しました。

冷たいドイツの大地に埋めるのですから何かしらの方法で暖める必要があります。
断熱材等で核地雷を包む案もあったのですが採用されませんでした


さて、では核地雷においてはどのような方法でこれを解決したのか
それは




「生きた鶏で保温する」





というものでした。

何も鶏だけをそのまま入れるのではありません。
時限起爆装置の設定時間は8日だったので、8日間生きてればいいのです
そのために餌と水も一緒に核地雷の中に入れられました

鶏の体温であればバッテリーを含む電子機器を維持するのに十分な温度が得られると考えられたのです

鶏が何らかの原因(高確率で放射線障害ですが)で死んでしまった場合は核地雷を掘り返して鶏を交換すれば良いし、
8日間を過ぎた鶏はそのまま解体して美味しく食べてしまえばいいのです(絶対に食べたくないですけど)

核地雷は8日間掘り返されなければ自爆するように設定され、
英軍司令部までの有線ケーブルが引かれ、いつでも起爆できるようになっていました。
(因みに、所定の操作をせずにケーブルを切断したら10秒以内に鶏もろとも起爆するそうです)

この核地雷には「ブルーピーコック」という名前が付けられました。
青孔雀という意味があるそうです。鶏が関係してないとは思えませんが。

この核地雷の威力は約10kt。広島に落とされた「リトルボーイ」が15ktですから、結構な威力があります
ブルーピーコックのプロトタイプ。
この中に鶏を入れるつもりだったのだろうか



結局、鶏を入れることで決定し、ドイツに埋めるため10個の核地雷が発注されました…
が、


同盟国、というか他国の領土に無断で核兵器を埋めるという外交的リスクがあまりにも大きすぎるため量産と配備は中止されました。
どうも爆弾自体に技術的問題があったわけではないようです

その後試作されたブルーピーコックは核爆弾を抜いて保管されたそうな


この計画に関する書類は(西ドイツに知られたら絶対に激怒するので)長い間機密指定され、
国立公文書館で保管されていたのですが、


機密指定が解除されたため2004年4月1日に公開されたのです。

結局、ブルーピーコックは公文書館によるジョークだったのでした。

ええ。10年前の嘘です




















と思いたいのですが英国面はそんなに甘くない。
嘘であるのは間違いないですが、
嘘なのは「公文書館によるジョーク」という部分であって、

それ以外は全て事実です






実際に2004年4月1日にブルーピーコックに関する文書が公開された当時は

インターネット上などでは日付の事もあって「エイプリルフールのジョークだろう」
と思われていたようです

そのため、公文書館はエイプリルフールの冗談ではないという表明を出したそうな
その時のBBCの記事から引用すると

"It does seem like an April Fool but it most certainly is not. The Civil Service does not do jokes."



だそうです。いくら公共放送で
「車を頻繁に破壊したり」「コメディ番組で民放のオープニングパクったり」「首相がそのコメディ番組のネタを公式な場で使ったり」する国でも

公文書館は立場的にジョークなんて言っちゃいけない立場ですしね




(実はこのネタ、出せるまで待ってた)

2014年3月18日火曜日

フォークランドの英国面:貨物船改造空母モドキ

3日ぶりの投下はまたしてもフォークランドに関する英国面。

とある貨物船にまつわるお話です





改装空母とは

世界初の空母フューリアスは最初から空母として建造されたものではなく、
軽巡洋艦として生まれました。
これを改装して、飛行機を載せられる甲板を付けたのが世界初の空母と言われています
(この軽巡洋艦も意味不明な装備と配置が山盛りの珍兵器なんですが今回は割愛)

空母になる前の軽巡洋艦「フューリアス」

空母になった後、再度改装を受けた空母「フューリアス」

二次大戦前まではこのようなことは比較的よくあることで、
日本の空母も「神鷹」「海鷹」は
それぞれドイツの客船「シャルンホルスト」と大阪商船の客船「あるぜんちな丸」を改造したものです

空母になる前の「あるぜんちな丸」
空母改装を受けて「海鷹」となった

「飛鷹」と「隼鷹」という改装空母も居ますがあれは設計段階で空母改造を想定していたのでちょっと例外です

他にも、建造途中の戦艦から改造された「赤城」「加賀」
高速給油艦から改造された「祥鳳」「瑞鳳」

他国でも、米国なら「ラングレー」「ボーグ級護衛空母」
英国なら「グローリアス級」「アーガス」などの例があります。

船体だけ残して上に甲板を載せるだけでとりあえずは何とかなるので、改造しやすいのです



戦後になると、このような改造空母は作られず
最初から空母として作られるのが当然になりました。


時は経ち、1982年フォークランド沖海域

英国は空母をフォークランドに派遣しましたが、
かつての大英帝国が誇った正規空母でなくて、
今では「軽空母」と呼ばれる部類の空母で、

垂直離着陸が出来る航空機のみが運用できるものでした
垂直離着陸の戦闘機は様々な国が試しましたが、
結局実用化したのは英国で開発された「ハリアー」シリーズのみ

戦闘機や軍事がよく分からない人でもアニメや漫画、小説等でもよく出てくるので
垂直離着陸が出来る戦闘機の存在は知っている人も多いのではないでしょうか


米軍で運用される「ハリアー」シリーズの最新型「AV-8B ハリアーⅡ」
(米国で開発もとい魔改造生産されてます)


英国がフォークランドに送り出した軽空母の艦載機は「BAe シーハリアー」
シーハリアーFRS1
当時最新の対空ミサイルAIM-9L「サイドワインダー」を搭載した高性能機でした

しかし、そんなハリアーの性質に英国軍は悩まされることになります
「継続飛行可能時間が短い」という欠点を抱えていました

燃料の消費が激しい上、着陸に用いる燃料が多い上に
燃料の搭載可能料は少ないというハリアー特有の問題です

継続飛行可能時間が短いと、何が問題なのか。
哨戒時間が短くなり、敵が発見しづらくなります
では、哨戒とは何か。

レーダーというのは地球が丸いために低い所を飛ぶ物は発見しにくいという性質が有り、
船のレーダーも同様に低い所の敵などは発見しにくいです

逆に、山に登った時に本来なら水平線の向こうに在るはずのものが見えたりするのと同様に
高いところから見下ろせばレーダーで遠くの敵も低い所の敵もよく見えます

さらに、早く気づけたとしてもそこから戦闘機を出していては既に遅い。
なので、ミサイルを吊り下げた戦闘機に空を飛ばせ、
レーダーで敵を探させつつ、発見したらすぐに攻撃できるようにしておく。
これが哨戒任務と呼ばれるものです

哨戒時間はちょっと情報が見つからなかったのですが、後継機のデータから想定するに
およそ90分。
これでは短すぎます

米軍の空母はE-2Cという大型のレーダーを載せて、遠くの敵を発見する為に
長時間飛行するという専用の「哨戒用航空機」みたいな物を持っていますが、
(実際は早期警戒機AEWと言うのですが面倒なので省略)
これの哨戒時間は5時間にも及び、2、3機載せておけば常に空に飛ばしておけます
E-2C「ホークアイ」
武装もしていませんし用途も違いますが、どっちにしろ空母を守るには
高いところからレーダーで見張ることが必要なのです

実際、超低空で進入する敵機を接近されるまでレーダーで発見できなかったため、
英国海軍はフォークランドにてフリゲート艦数隻と駆逐艦を失っています



では、この状態を解決するために英国はどのように考えたのか
最初の問題は、ハリアーの数に有りました

あまりにも急な出撃となったため、
英国がフォークランドに送り込んだ2隻の空母に搭載されていたハリアーの数は
僅か20機。本来なら合わせて40-45機程を載せて、運用できるはずです
パイロットや整備の面での人員も必要ですが、機体がなければ話にならない

なので、先に出発した2隻の空母を含む艦隊の後を追うように増援の輸送艦が送り込まれました
それが、民間のコンテナ貨物船「アトランティック・コンベヤー」です
アトランティック・コンベヤー
アトランティック・コンベヤーに載せられたハリアー
こうして、多数のハリアーを載せた「アトランティックコンベヤー」と
姉妹館の「アトランティック・コーズウェイ」はフォークランドへ向かいます

輸送艦で航空機を運ぶのは割とふつうのことですが、問題が一つ残ります
「この輸送艦には大型クレーンもなければ、空母に載せ替えるために寄れる港は敵が確保している」
海のど真ん中でクレーンもなしに載せ替えなければなりませんが、
英国は、とある手段で解決しました



手法は割と単純なものです。
「垂直に離着陸できるんだから自分で飛んで空母まで行ってもらおう」というものでした

しかし、このようなことを試したり、あまつさえ実際に実行したのは後にも先にも英国だけです



それもそのはず。コンテナ船は甲板がかなり丈夫なので強度は問題有りませんが、
「本来ならジェット排熱に耐えられず溶けてしまう」
はずなのです

しかし、甲板を耐熱に改造していては改装空母になってしまうほどの改造が必要で、
今直ぐに必要なのでそんな時間は有りません。


この問題に対して英国は「耐熱マットを敷く」という手段で解決しました
因みに、マットは使い捨てだそうです





フォークランドで荷物をおろしてすぐ帰ったわけではなく、
整備するときや機体の整理等を行う際もこの貨物船にハリアーを置いていたみたいです
他にも、ヘリコプターならマットを使い捨てする必要もないのでヘリコプターはこちらにまとめられていたそうです。

しかし、わざわざハリアーを運んできて数を増やしたにも関わらず
哨戒をくぐり抜けてアルゼンチン軍の攻撃機は攻撃を繰り返し、
ついにこの「アトランティック・コンベヤー」もアルゼンチン軍に撃沈されてしまいます
攻撃を受けた後の「アトランティック・コンベヤー」
数日後に沈没


多数のヘリコプターと陸戦用の補給物資等を大量に載せたまま沈んだので、
英軍は補給計画の見直しを迫られることになりました。


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2014年3月15日土曜日

フォークランドにも英国面:空中給油機を空中給油して空中給油する

今日は英国面です。
フォークランドの記事を書いたのは英国面ネタを強化するためとかいう事実はない
断じて無いはずなのだ!


さて、フォークランド中編にて、戦略爆撃機アブロ・バルカンによる攻撃作戦が実施されたと言いましたが、
今回はこの攻撃作戦「ブラックバック作戦」に関する英国面です


アルゼンチンによるフォークランド侵攻の後、
イギリスは海軍で派遣艦隊を編成するとともに、アルゼンチンによる更なる戦力の増強を防ぐため、
補給線の切断手段を検討した。
フォークランドに対する補給手段は2つ
海上からの輸送船による補給と、航空機を用いた空輸です
潜水艦補給作戦?あんなのが出来るのは日本軍だけですよ

フォークランドに対して派遣された原子力潜水艦は程なく付近を航行していた巡洋艦を沈め、
これによりアルゼンチンは潜水艦を警戒して海軍艦艇をフォークランドに近づけられなくなります
巡洋艦を撃沈した原子力潜水艦「コンカラー」


アルゼンチン軍も潜水艦は持ってたのですが、
問題は水上艦の対潜水艦装備に有りました。

潜水艦を使うこと、潜水艦と戦うことは何よりも経験が重要で、
予算がいくらあっても簡単にはひっくり返せませんし、
その経験から得られた物は最重要レベルの軍事機密で、
余程の国でない限り情報は他国には漏れません。

日本とアメリカくらいですかね。イギリスとアメリカも情報交換してるかもしれませんが。

実の所、当時大規模な対潜水艦作戦を実施した経験があるのは
日本、アメリカ、イギリス、ドイツのみという状況でした

そして、それ以外の国でまともな対潜戦闘が出来る国はソ連くらいのもの
まともな海上戦の経験がないアルゼンチンには潜水艦との戦いの経験どころか
まともに対潜水艦装備も無かったのです

どうあがいても見つけられない潜水艦に対してアルゼンチンはさぞ恐怖したことでしょう
何処に居るかも分からない潜水艦がうろちょろしてるような場所には居られません。
アルゼンチン海軍の艦艇はフォークランドには近づけなくなりました。

とまあ、これで海上からの補給は断ち切れました

では、空輸はどうなのか




フォークランド諸島には、舗装されて、ジェット機や大型機が利用可能な空港は首都スタンリーにしか有りませんでした。
ヘリコプターじゃ少し遠いですし、搭載量少ないですし
他にもペブル島飛行場などは有りますが、
補給能力として一番大きいのはこのスタンリーの空港です。
ここに戦闘機だの攻撃機だのを配備されてはイギリス的にはかなり面倒です。

イギリス軍は、ここを攻撃することで敵の補給能力を大きく削ぐことを計画しました。




それでは、実際に爆撃をするためのプランを見て行きましょう

まずは爆撃機を飛ばす場所を選ばなければなりません。
他国に協力してもらえない場合、自国領で最も近い飛行場から飛ばすしか有りません
サウスジョージア島は既に占領されている上、飛行場が有りません

最寄りの英領はアセンション島
フォークランド諸島までの距離は

約6400km。往復で12800kmです。
イギリス空軍にこれだけの距離を飛行できる爆撃機、攻撃機があるのか。

無いです。そんな距離を飛べるのは米国のB-52、ソ連のTu-95くらいのものです


では、イギリス空軍でなるだけ長距離の航続距離を持つ爆撃機といえば
2008年 航空ショーにて「アブロ・バルカン」
アブロ・バルカン 航続距離 4100km

ハンドレページ・ヴィクター
ハンドペレージ・ヴィクター 航続距離3700km

この2機が核兵器を他国にいつでも投入できるように配備されていました。
どちらもいわゆる核抑止用の戦略爆撃機ですが、
通常爆弾などによる攻撃も出来ました。

しかし、どうやるにしろ航続距離が足りない。
じゃあどうするのか

至って普通です。空中給油すればいい。
燃料だけ運ぶ機体と爆弾を運ぶ機体に分けて、燃料が足りなくなったら爆弾を運ぶ機体に燃料を分けて燃料を運ぶ機体はそのまま帰ります。

帰りも燃料が足りなければ途中までお迎えに行けばいいのです。
米軍のF-16戦闘機が空中給油機KC-135から給油を受ける

自衛隊のKC-767による空中給油の様子 空中給油機からの視点




では、イギリス空軍に空中給油機はあるのか。
あります・・・が、ここに問題が有りました。

米空軍や航空自衛隊で使われている空中給油機は基本的に、
航続距離が非常に長い旅客機や軍用輸送機を改造したもので、
それ単体の航続距離は10000km以上になるのが普通です。
航空自衛隊のKC-767J ボーイング社製の旅客機、B767を改造したもの

当時のイギリス軍の空中給油機は、コレでした

余った「ハンドペレージ・ヴィクター」を空中給油機に改造したものです
コイツの航続距離は3700km。重い爆弾を積んでいないとはいえ旅客機改造の空中給油機の航続距離には遠く及びません。
では、この問題を英国はどう解決したか。





こうしました。
コレ、一見しただけではよくわからないと思うので解説します

一番上に攻撃目標スタンレー空港が、一番下が出発点アセンション島空港です
つまり、この2つの間が6400kmあります。

○にRと書かれているのはRTB、要はそこからアセンション島に帰る という意味です

中央のWave1にある2つのピンク色の機体。これが爆撃を実行する「アブロ・バルカン」です
2機あるのは、途中で問題が発生した際にも作戦を続行するために用意された予備機です
その他の機体のシルエットは全て空中給油機「ヴィクター」です

灰色のラインは全て予備機を意味しています

Wave1は爆撃を実行するバルカンと、フォークランド付近まで随伴する空中給油機ヴィクターのグループです。

Wave2はそのバルカンとヴィクターの燃料を途中まで運ぶためのグループです。

Wave3はバルカンとヴィクターの帰りの燃料を届けるためのグループです

つまり、この作戦は
爆撃機に燃料を給油するための空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機から空中給油を行い、
その空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機を出して空中給油する」という意味不明な事になっています

爆撃機1機と給油機1機の計2機をフォークランドまで飛ばすために使われたのは予備機含めて
16機になります

これが旅客機タイプの空中給油機ならば2機でこれを達成できます。
フォークランド紛争が終わって直ぐに空軍が始めたのは空中給油機の予算確保だったといいます。こんなのはもう嫌ですからね


結局、このプランを使った攻撃は6回行われ、
スタンレー空港の利用を最後まで妨害し続けたそうです




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2014年3月6日木曜日

英国面な兵器:謎の木工品

今日は英国面で行こうと思います。
書くのが楽なんですよ。調べる時間が短くて済みますし。
その割に人気な気もしますし。

さて、今回は分かる人は既にタイトルでお気づきだと思います。
今回紹介するのは「デ・ハビランド DH98 モスキート」です


de Havilland DH.98 Mosquito




時は1930年台半ば。ファシズムが台頭し、ナチス・ドイツが誕生。外交政策で高圧的な態度を取り
欧州全体に不穏な空気が漂っていた頃。

航空機メーカー、デ・ハビラント社では英国航空省より新型爆撃機開発の契約を獲得し、
新型爆撃機を開発することになったが、
デ・ハビラント社は航空省との契約を長い間結んでいなかった上、
軍用機なんて作ったのは一次大戦の頃に契約した練習機だけで、
最近ようやく久々に受注した軍用練習機が試験を終えて量産に入った段階で、
その量産もうまく行っているとは言えないものであった

そんな中で、航空省から出された要求は
航続距離:4800km 爆装搭載量:1800kg
巡航速度:4600mで443km/h
さらに、短い航続距離で3600kgの搭載量という要求も出された

そこまで難しい内容ではなかったが、
他の航空会社は機体に軽金属を採用し、機銃で防御するという普通の選択肢を取り、開発を進めたが
デ・ハビラント社には、全金属製航空機の開発実績自体が無かった。






だから木を選んだ。



主翼や機体が木製なのは複葉機時代の航空機だと思う方も居るかもしれないが、
だがデ・ハビラント社には(比較的)高速な木製単翼航空機の開発実績があった。
しかし、それでも350km/h程度。

450km/hまで速度を上げられないと誰もが思っていた。

デ・ハビラント社の人間以外は。


エンジンは二次大戦中最大の傑作と名高い
「ロールスロイス マーリン」エンジンを使用することに決まり、

旧式の木製旅客機を改造してマーリンエンジンを搭載し、機関銃座や機関銃要員等を載せて飛行試験したものの
至って平凡な性能しか出せなかった。
しかし調整を重ね、重い機銃を撤去していくうちに一つの考えを思いつく。

「もしかしたら、敵の戦闘機すら追いつけない速度で飛行し、
防御機銃も全く必要ない高速爆撃機が作れるのではないか」

という「高速爆撃機思想」が誕生した。
早速この発想を元に再設計が行われ、
結果、1800kgの爆弾を積んだ状態で最高速650km/hという試算が出た。

1938年、この木製爆撃機のプランを航空省に提出したが、相手にされなかった。
いくら木製航空機の経験が豊富だからといって、
木製航空機はいくら何でも時代遅れ過ぎであると一蹴されたのである

当時の爆撃機は、
敵の戦闘機の攻撃にある程度耐えられるだけのボディが必要だと考えられいた。
また、あまりにも斬新すぎる発想故に実際に作れるのかどうか怪しまれたのだ。


デ・ハビラント社は戦時中に鉄やアルミニウムが不足している状態でも木材資源は使える上、
戦時中には暇になる木工家具職人を使って製造できるという
微妙に後ろ向きなメリットも主張したが、航空省は聞き入れてくれなかった。

デ・ハビラント社はこの計画に何ら問題はないとして、自費による独自開発を決定した。
その後、航空省は高速爆撃機思想に理解を示したフリーマン空軍大将の支持もあり、
1940年3月、試作機を含む50機を発注した。

しかし、その頃既にポーランドはロシアとドイツに踏み潰されており、
イギリスとフランスはそれを受け宣戦布告、
英軍は海外派遣軍を編成、フランスに派遣し、どちらの国も戦時体制に入り始めていた。

宣戦布告後の半年以上、奇妙なことに殆ど戦闘が発生していなかったが、
1940年5月、突如ドイツ軍はフランスへの侵攻を開始。
重要先進国であり、列強の一角であるフランスが僅か一ヶ月足らずでドイツに占領され、
その機動力を活かした圧倒的な侵攻能力に世界は驚愕し、恐怖した。

イギリス軍もその被害を免れず、ダンケルク撤退にて兵士30万人の撤退には成功したものの、
戦車や火砲等の重装備どころか、歩兵の小火器すらも置いてきてしまったため
その後のイギリスでは武器不足が深刻化。

更にいつ攻めてくるかもわからないナチス・ドイツに対する恐怖感も重なり、
国家全体でドイツの攻撃に抵抗する術を確保すべく、

有り余った銃剣を鉄パイプに溶接しただけの「ホーム・ガード・パイク」だの
水道管に黒色火薬を詰めただけの「急増迫撃砲」だの、
手間がかからずに生産できるものをどんどん作っていました
(正直、英国人は日本の竹槍を笑えないと思う)

ダンケルク撤退では戦闘機も多数失い、ドイツに対して十分に防衛できるかもわからないのに
侵攻作戦に使う新型爆撃機の開発なんて出来るわけがありません。

デ・ハビラント社にも既存の金属製航空機の生産が命じられました。
7月には開発を再開し、試作機の開発を急いでいる間にも
ドイツはイギリスへの上陸作戦の前に、制空権の獲得を目的とした航空戦が始まり
「バトル・オブ・ブリテン」が発生します

デ・ハビラント社も影響を免れず、工場の稼働率が75%に落ちる中でも開発を続け、
11月には試作機が初飛行。

設計当初の予想である650km/hを大きく超えて、660km/hという最高速をたたき出し、
当時英空軍で採用されていた戦闘機、スピットファイアを上回る速度を出しました。

理由としては、木材を使ったことによる軽量化に加え、
リベットなども使わず、継ぎ目一つ無いモノコック構造の合板による空気抵抗の低下の効果があったとも言われています

当時、爆撃機が500km/hを超えられないのが普通である中、
絶対に追いつけないはずの戦闘機すらも追い越す速度を手に入れた爆撃機は、
当然ドイツ軍の戦闘機にも追いつけないと予想され、
その高性能ぶりから航空省は可能な限りの生産を要求します。

1942年5月には量産機が英空軍に引き渡され、その高性能を発揮しました

強力なエンジンに軽い機体、継ぎ目一つ無い空気抵抗の少ない機体は
予想通り、ドイツ軍が迎撃に上がっても殆ど追いつけず、すぐに逃げられてしまいました。

1943年には最高速試験が行われ、最軽量状態にて
707km/hをたたき出します。


結局、大戦末期にドイツ空軍がジェット戦闘機を投入するまでモスキートは世界最速の航空機であり続けました。
この木工品に対して、誰かがこう言ったそうです。


「The wooden wonder」(木造機の奇跡)






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2014年2月22日土曜日

久々の更新なんで好きな事を書いてみる 英国面:それゆけ後ろ向きに

えーと、多分一週間ぶりの更新です
本来の予定なら次はシリアの組織紹介で政府軍を紹介するところなんですが、
今日はとあるアニメを見て思い出した英国面について書きたいと思います

シリアの記事は毎回書くのに時間掛かるんで、土曜日の日中に書きます





さて、今日の英国面は「挑戦的な」という名前を与えられ、
新しい航空戦の時代を読み間違えてしまった英国製戦闘機のお話


その名前はBoulton Paul Defiant(ボールトンポール デファイアント


ボールトンポール デファイアント

ボールトンポール社が作った戦闘機なんですが、ちょっと変わっています
というか変わり者過ぎます。

この戦闘機の特徴、それは「後ろ向きにしか攻撃できないこと」にあります
正確には後ろ向きだけではないのですが、それに関してはこれから解説しましょう

時は1935年、
イギリス空軍は一次大戦で活躍したブリストルファイターの設計思想である、
旋回機銃を備えた単発(エンジンひとつ)複座(二人乗り)戦闘機」という仕様要求を出した。
要求仕様を完璧にこなしつつかなり早く完成させたため、デファイアント採用された
そう、要求仕様には合っていたのだ。

しかし、要求仕様が間違っていたのだ


旋回機銃、つまり後部機銃は普通大型かつ機動性の低い爆撃機や攻撃機に搭載されるが、
デファイアントは爆弾も積めず魚雷も載せられない。純粋な戦闘機である。

デファイアントの旋回機銃は、機体後方から上面、左右に対しては撃てるのですが機体の真正面には撃てないのです



1940年、ドイツとの戦争が始まりイギリス周辺海域での哨戒任務を実施し、
オランダ沖で敵の哨戒機を撃墜。
ダンケルク撤退にも参加して65機を撃墜するというかなり良い戦果を上げている。

これが何故かといえば、見た目が同じイギリス軍の戦闘機、ハリケーンに似ていたが故に
普通の戦闘機なら弱点である後ろにドイツ軍の戦闘機がついた所、
デファイアント後部機銃の餌食にされた。一番攻撃しやすい所なので落とされて当然である

ドイツ軍パイロットも、まさか戦闘機なのに後ろ向きに機銃がついてるとは思わなかっただろう

イギリス軍の戦闘機 ハリケーンMkI

後ろ向きに撃てる戦闘機」の話は程なくドイツ軍が知る所となり、その対策が考えられた
そして、出された結論は
敵機に対して正面から攻撃せよ」「真後ろにつかず、機体の腹を狙え
最早、戦闘機に対する攻撃法とはかけ離れていました

1940年の夏にはドイツ軍のイギリス本土上陸作戦であるアシカ作戦(ドイツ語読みでゼーレーヴェ作戦とも)の前段階として、ドイツ空軍による制空権の獲得のために、
ドイツ空軍をイギリスに派遣。所謂「バトル・オブ・ブリテン」が発生します

この時もデファイアントは使われたのですが、
この頃には前述の対策が知れ渡っており、1機も撃墜できずに出撃したうちの半数以上が撃墜されるという有り様

1940年の秋ごろには既に戦闘機としての仕事はなくなっていました。
地上で対空機銃として使ってたほうがよっぽど有益だと言われたとか


では、そもそも何故コンナモノを英国は作ってしまったのか

まず、元のコンセプトであるブリストルファイターを確認してみますと、
複座で旋回機銃がついた戦闘機であるところに違いはないのですが、
パイロットが使える固定武装を持つため、ブリストル・ファイターはなんと正面に攻撃できるのです!

しかも、一次大戦の頃の戦闘機は相対的に遅く、旋回機銃でも十分狙えるような速度でした。
(といってもブリストル・ファイターにおいては旋回機銃はオマケで、メインはパイロットの操作する正面固定の機銃でした)
それでもそれなりに狙えるため、ドイツの戦闘機にとっては脅威でした。

その上、機動力は普通の戦闘機と変わらず前にも後ろにも撃てるという恐るべき戦闘機だったのです

では、デファイアントはどうでしょう
一次大戦のような300馬力以下のエンジンなんて最早戦闘機では使われなくなり、
1000馬力以上が普通となり、機体の全金属化により7.7mm機銃1つでは敵機を撃墜するのは難しくなり、イギリス空軍でも7.7mmを8や12もつけるようになった
戦闘機自体の速度も200km前後から一気に500km前後まで上がった。

ブリストル・ファイターは他の戦闘機と変わらない機動力を持ち合わせていたが、

デファイアントは機銃を複数装備する関係上、旋回機銃に油圧ポンプが必要になったため、
同じエンジンを搭載する戦闘機に比べ1000kg近くも重くなり最高速度も低下、
しかも機銃でうまく狙うためには回避運動も出来ないため
敵からすれば当てやすいことこの上ない


英国は、古い思想で戦おうとしてしまったのかもしれません
その割には正面固定の機銃を付けなかったのが不思議ですが。





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2014年2月14日金曜日

2月14日はバレンタインデー。しかし、ここには女の子もチョコも実在しない。あるのは戦車だ!

ヴァーレンタイン?ああ、戦車のことね

そういう事を言う人は少なからずいるだろう。


え?どういう事か分からない?
ではそういう人たちのために偉大なる英国面の生み出した戦車を紹介しよう





Valentine Infantry Tank(バレンタイン歩兵戦車)



バレンタイン歩兵戦車


え?そもそも歩兵戦車が何だかわからないって?
戦車に歩兵を乗せる?ソ連じゃあるまいし、それじゃ2週間で死んじまうよ、歩兵が。
ではそこから説明しよう






世界初の戦車から受け継がれるドクトリン

学校の歴史の授業でも習うように、一次大戦は機関銃と塹壕の組み合わせによって
今までよりもはるかに防衛側が有利な状況になった。
いくら榴弾砲を撃ちこんでも退避壕(要は防空壕みたいな穴)に逃げ込まれて殆ど被害が発生せず、
歩兵を突っ込ませるために撃ちこむのをやめれば退避壕からわらわら出てきては機関銃を再配置し、歩兵を突っ込ませた頃には既に射撃可能。
あとは歩兵が穴あきになって・・・

それを数百万人分繰り返した頃、
とある発想が生まれた。
「機関銃が効かない鉄板を自走させてしまえ。」
そうして、世界初の戦車マークIが英国で誕生する。

Mk.I Tank



英国で生まれた戦車は、歩兵を随伴させて塹壕戦を突破することに特化していて、
歩兵と一緒に行動することが大前提であった。

そして一次大戦が終わり、イギリス軍は戦間期にとある議論が発生する
戦車は機動力を重視するべきか、防御力を重視するべきか。
結局、二次大戦に入る前に「それぞれ別の考え方を持った戦車を別々に作る」という選択をする
(戦車は騎兵科に属するか歩兵科に属するかの議論でもあったけど)

そして、英陸軍には歩兵戦車と巡航戦車の2つが生まれた。
歩兵の随伴を前提とし、装甲を重視、歩兵がついて来れないと意味が無いので低速でも構わないという設計の歩兵戦車

高い機動力と薄い装甲を持ち合わせた巡航戦車。
この2つに分けた。

そして、Ⅲつ目の歩兵戦車として生まれたのが
Mk.Ⅲ Valentine Infantry Tank。バレンタイン歩兵戦車である。
名前の由来は、開発関係者に「Valentine」という人がいたからとか、
設計の提出日が2月14日だったりだとか言われている

バレンタインの開発コンセプトは「新技術を使わず、小型の車体に必要な機能を詰め込んで大量生産に向いたもの」であった

一つ前の歩兵戦車、マチルダⅡに比べ装甲も薄く機動力も低いが、生産力だけは確実に勝っていた。

バレンタインの主砲は2ポンド砲。口径40mmで対戦車攻撃をするならより大口径な砲よりも有利。
但し、榴弾は使えないため、歩兵の脅威となる機関銃陣地等を破壊できないという
歩兵戦車として致命的な欠点ではあったが、
対戦車戦闘をするには割と都合のいい戦車であった。
「機動力さえあれば」



対戦車戦は機動力も相当に重要である。歩兵戦車は歩兵と同じ速度で動く。機動力なんて意図的に減らしているような戦車だ。
その機動力は16tの重さに対して135馬力。
チハたんこと、九七式中戦車ですら14tの車体に150馬力の発動機を載せています。
そんなバレンタインの最高速度は15km/h
九七式中戦車チハが38km/h

さらに、バレンタインは非舗装路(つまり道路でないところ)を走れば8km/hまで速度が落ちる。
いくら歩兵と同行するからといっても遅すぎである。

結局、大量生産という利点は、レンドリース法によってアメリカから送られてきた
M4シャーマン戦車に全てを持っていかれる。

それ相応の装甲と400馬力のエンジンによる38km/hの速力。
そして米国式チート生産力を最大限発揮する生産性。
榴弾砲も徹甲弾も使える75mm砲。
欠点があるとすれば航空機用星形エンジンを積むために車高が高くなったことくらい。
結局、バレンタインは目立たない位置に落ち着いてしまった。

それでも、特段問題があるわけでもなく「珍兵器」扱いはされていない。





「とある派生形を除いて」






その名はGap Jumping Tank。



まずは、画像を観てもらうことにしよう





「戦車が飛んでる!?」
かと思えば「なーんだ、ゲームの画像じゃないか」
と思ったそこのアナタ。
確かにこれがゲームの画像で、Gap Jumping Tankの実車は存在しない。

しかし、紛れも無く現実に計画され、実験まで行われた兵器なのだ
(証拠として、Wikipedia英語版に記述あり)



何故英陸軍はコンナモノを作ろうとしたのか。
自分で調べたところによると、どうも地雷原を「飛んで」超えるつもりだったらしい

「地雷撤去するのめんどくさいなー 時間かかるし戦車通せるようになるまで足止め食らうしなー
歩兵は通せても戦車は通せねえよなー」とでも思ってこういうものを考えたんでしょうか。

そして、実験。実験の方は写真が残っています。
それがコレ

偉大なる英国が生み出した傑作輸送車「ユニバーサルキャリア」にロケットを追加したもの。
戦車で実験する前に、これで実験したのだ。
そして結果























何故実験するまでに気づかなかったのか。
普通に考えて、飛行時の重量バランスを考えてない物を飛ばそうだなんてしたら
こうなるのは当然である

パンジャンドラムといい、コレといい、実験するまで分からないものなのだろうか本当に
これぞ英国面、というのを見せつけられた気がする









ちょっと別の話

最近、とあるアニメで英国面を感じたのでそれもまとめて書いてみる



とあるアニメには航空機が出てくるが、
その航空機というのがオスプレイに近い構造を持つ「ティルトウィング」の双発複座機なんですが、

その航空機というのには固定武装がついておらず、空中なのに後部座席からライフルで撃ちあう有り様。
演習だとはいえ一次大戦でもやってるつもりなんだろうか…
(あとはエアインテークの形からしてオーバーヒートしそうだとか永久機関とか色々突っ込みたいところはあるけど割愛)

まあ、それは練習機の話で戦闘機は違う…と心の底から願っていたもんなんですがね
現実は非情。戦闘機型も7.7mm機関銃っぽいのが後部座席に追加されてるだけで基本は一緒。

…アホか。二次大戦クラスの戦いを一次大戦の兵器でやるようなもんですよ
実際、後部機銃は一次大戦ではかなり有効なんですが、
そこから二倍近い速度での戦闘に変化した二次大戦には最早威嚇にしか使えなくなっていました


そのアニメの世界ではヘリコプターのほうが先に開発されたらしいんですが
(それに関しては竹トンボがある時点で、強力な発動機が開発されてしまえば確かに有り得るんですけどね)
それなら、ヘリコプター→固定翼機→ティルトローターという流れになるはずなんですがねぇ…
(機構の複雑さ的に)
しかも、2つのローターの回転を同調させる技術はあるくせに
数少ない固定翼戦闘機にはプロペラ同調機が付いてないと来た
基本的にほぼ同じ技術どころか、前提技術的に逆じゃないですかねぇ…


ミリタリー的、技術的に突っ込みどころは多々あるアニメ、某所では主人公が気持ち悪いと評判でした
これは面倒だから次回、とある英国面兵器と一緒に紹介しましょう


え?シリアを先にやれ?
政府軍はまだ調べてるんだ待ってくれ

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