フォークランドの記事を書いたのは英国面ネタを強化するためとかいう事実はない
断じて無いはずなのだ!
さて、フォークランド中編にて、戦略爆撃機アブロ・バルカンによる攻撃作戦が実施されたと言いましたが、
今回はこの攻撃作戦「ブラックバック作戦」に関する英国面です
アルゼンチンによるフォークランド侵攻の後、
イギリスは海軍で派遣艦隊を編成するとともに、アルゼンチンによる更なる戦力の増強を防ぐため、
補給線の切断手段を検討した。
フォークランドに対する補給手段は2つ
海上からの輸送船による補給と、航空機を用いた空輸です
潜水艦補給作戦?あんなのが出来るのは日本軍だけですよ
フォークランドに対して派遣された原子力潜水艦は程なく付近を航行していた巡洋艦を沈め、
これによりアルゼンチンは潜水艦を警戒して海軍艦艇をフォークランドに近づけられなくなります
巡洋艦を撃沈した原子力潜水艦「コンカラー」 |
アルゼンチン軍も潜水艦は持ってたのですが、
問題は水上艦の対潜水艦装備に有りました。
潜水艦を使うこと、潜水艦と戦うことは何よりも経験が重要で、
予算がいくらあっても簡単にはひっくり返せませんし、
その経験から得られた物は最重要レベルの軍事機密で、
余程の国でない限り情報は他国には漏れません。
日本とアメリカくらいですかね。イギリスとアメリカも情報交換してるかもしれませんが。
実の所、当時大規模な対潜水艦作戦を実施した経験があるのは
日本、アメリカ、イギリス、ドイツのみという状況でした
そして、それ以外の国でまともな対潜戦闘が出来る国はソ連くらいのもの
まともな海上戦の経験がないアルゼンチンには潜水艦との戦いの経験どころか
まともに対潜水艦装備も無かったのです
どうあがいても見つけられない潜水艦に対してアルゼンチンはさぞ恐怖したことでしょう
何処に居るかも分からない潜水艦がうろちょろしてるような場所には居られません。
アルゼンチン海軍の艦艇はフォークランドには近づけなくなりました。
とまあ、これで海上からの補給は断ち切れました
では、空輸はどうなのか
フォークランド諸島には、舗装されて、ジェット機や大型機が利用可能な空港は首都スタンリーにしか有りませんでした。
ヘリコプターじゃ少し遠いですし、搭載量少ないですし
他にもペブル島飛行場などは有りますが、
補給能力として一番大きいのはこのスタンリーの空港です。
ここに戦闘機だの攻撃機だのを配備されてはイギリス的にはかなり面倒です。
イギリス軍は、ここを攻撃することで敵の補給能力を大きく削ぐことを計画しました。
それでは、実際に爆撃をするためのプランを見て行きましょう
まずは爆撃機を飛ばす場所を選ばなければなりません。
他国に協力してもらえない場合、自国領で最も近い飛行場から飛ばすしか有りません
サウスジョージア島は既に占領されている上、飛行場が有りません
最寄りの英領はアセンション島
フォークランド諸島までの距離は
約6400km。往復で12800kmです。
イギリス空軍にこれだけの距離を飛行できる爆撃機、攻撃機があるのか。
無いです。そんな距離を飛べるのは米国のB-52、ソ連のTu-95くらいのものです
2008年 航空ショーにて「アブロ・バルカン」 |
ハンドレページ・ヴィクター |
この2機が核兵器を他国にいつでも投入できるように配備されていました。
どちらもいわゆる核抑止用の戦略爆撃機ですが、
通常爆弾などによる攻撃も出来ました。
しかし、どうやるにしろ航続距離が足りない。
じゃあどうするのか
至って普通です。空中給油すればいい。
燃料だけ運ぶ機体と爆弾を運ぶ機体に分けて、燃料が足りなくなったら爆弾を運ぶ機体に燃料を分けて燃料を運ぶ機体はそのまま帰ります。
帰りも燃料が足りなければ途中までお迎えに行けばいいのです。
では、イギリス空軍に空中給油機はあるのか。
あります・・・が、ここに問題が有りました。
米空軍や航空自衛隊で使われている空中給油機は基本的に、
航続距離が非常に長い旅客機や軍用輸送機を改造したもので、
それ単体の航続距離は10000km以上になるのが普通です。
当時のイギリス軍の空中給油機は、コレでした
余った「ハンドペレージ・ヴィクター」を空中給油機に改造したものです
コイツの航続距離は3700km。重い爆弾を積んでいないとはいえ旅客機改造の空中給油機の航続距離には遠く及びません。
では、この問題を英国はどう解決したか。
こうしました。
コレ、一見しただけではよくわからないと思うので解説します
一番上に攻撃目標スタンレー空港が、一番下が出発点アセンション島空港です
つまり、この2つの間が6400kmあります。
○にRと書かれているのはRTB、要はそこからアセンション島に帰る という意味です
中央のWave1にある2つのピンク色の機体。これが爆撃を実行する「アブロ・バルカン」です
2機あるのは、途中で問題が発生した際にも作戦を続行するために用意された予備機です
その他の機体のシルエットは全て空中給油機「ヴィクター」です
灰色のラインは全て予備機を意味しています
Wave1は爆撃を実行するバルカンと、フォークランド付近まで随伴する空中給油機ヴィクターのグループです。
Wave2はそのバルカンとヴィクターの燃料を途中まで運ぶためのグループです。
Wave3はバルカンとヴィクターの帰りの燃料を届けるためのグループです
つまり、この作戦は
「爆撃機に燃料を給油するための空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機から空中給油を行い、
その空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機を出して空中給油する」という意味不明な事になっています
爆撃機1機と給油機1機の計2機をフォークランドまで飛ばすために使われたのは予備機含めて
16機になります
これが旅客機タイプの空中給油機ならば2機でこれを達成できます。
フォークランド紛争が終わって直ぐに空軍が始めたのは空中給油機の予算確保だったといいます。こんなのはもう嫌ですからね
結局、このプランを使った攻撃は6回行われ、
スタンレー空港の利用を最後まで妨害し続けたそうです
0.1Monaでも頂ければ次の記事への原動力となります
寄付:MSmPH9ptv8Vp8N3JMjFCgQ25ucXv3xKTAo
通常爆弾などによる攻撃も出来ました。
しかし、どうやるにしろ航続距離が足りない。
じゃあどうするのか
至って普通です。空中給油すればいい。
燃料だけ運ぶ機体と爆弾を運ぶ機体に分けて、燃料が足りなくなったら爆弾を運ぶ機体に燃料を分けて燃料を運ぶ機体はそのまま帰ります。
帰りも燃料が足りなければ途中までお迎えに行けばいいのです。
米軍のF-16戦闘機が空中給油機KC-135から給油を受ける |
自衛隊のKC-767による空中給油の様子 空中給油機からの視点
では、イギリス空軍に空中給油機はあるのか。
あります・・・が、ここに問題が有りました。
米空軍や航空自衛隊で使われている空中給油機は基本的に、
航続距離が非常に長い旅客機や軍用輸送機を改造したもので、
それ単体の航続距離は10000km以上になるのが普通です。
航空自衛隊のKC-767J ボーイング社製の旅客機、B767を改造したもの |
当時のイギリス軍の空中給油機は、コレでした
余った「ハンドペレージ・ヴィクター」を空中給油機に改造したものです
コイツの航続距離は3700km。重い爆弾を積んでいないとはいえ旅客機改造の空中給油機の航続距離には遠く及びません。
では、この問題を英国はどう解決したか。
コレ、一見しただけではよくわからないと思うので解説します
一番上に攻撃目標スタンレー空港が、一番下が出発点アセンション島空港です
つまり、この2つの間が6400kmあります。
○にRと書かれているのはRTB、要はそこからアセンション島に帰る という意味です
中央のWave1にある2つのピンク色の機体。これが爆撃を実行する「アブロ・バルカン」です
2機あるのは、途中で問題が発生した際にも作戦を続行するために用意された予備機です
その他の機体のシルエットは全て空中給油機「ヴィクター」です
灰色のラインは全て予備機を意味しています
Wave1は爆撃を実行するバルカンと、フォークランド付近まで随伴する空中給油機ヴィクターのグループです。
Wave2はそのバルカンとヴィクターの燃料を途中まで運ぶためのグループです。
Wave3はバルカンとヴィクターの帰りの燃料を届けるためのグループです
つまり、この作戦は
「爆撃機に燃料を給油するための空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機から空中給油を行い、
その空中給油機を途中まで運ぶために空中給油機を出して空中給油する」という意味不明な事になっています
爆撃機1機と給油機1機の計2機をフォークランドまで飛ばすために使われたのは予備機含めて
16機になります
これが旅客機タイプの空中給油機ならば2機でこれを達成できます。
フォークランド紛争が終わって直ぐに空軍が始めたのは空中給油機の予算確保だったといいます。こんなのはもう嫌ですからね
結局、このプランを使った攻撃は6回行われ、
スタンレー空港の利用を最後まで妨害し続けたそうです
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