射程が伸びたことによって新たな問題が生まれました。
それまでの大砲が1km以下の射程だったのに対し、ライフリングを入れた大砲は
射程が5kmを超えてしまったのです
何故5kmを超えるとマズいのか。簡単な事です
「地平線の向こうに砲弾を届けられるから」です
今までは砲から直接敵が見えていたので、双眼鏡でも使いながら射撃してりゃよかったのですが、
ついに地平線の向こうまで砲弾が届くようになり、砲の地点から直接見て撃てなくなったのです
当然、射程が伸びただけであって別に最大射程で撃たなければならないというわけでは有りませんが
「相手が反撃できない状況を作り出し一方的に叩く」というのは戦闘の基本で、
その基本に従うなら相手の射程外から一方的に砲弾を撃ちこめば基本的に勝ったも同然です
世の中には大規模投石機の頃から千年以上研究を重ねてきた「弾道学」という便利な代物があります。
位置エネルギーを利用した投石機「トレビュシェット」 |
弾道学さえあれば目標との高低差と距離から適切な角度と火薬の量を計算で出して、
理論上正確に当てることが出来ます
だったら、敵が居る地点に弾道学的な計算を使って撃てばいいのではないか
という訳には行きません
実際の戦場には風が吹いていますし、天気も変わりますし、
敵だってアホじゃありませんから動きます。そして風は高度や地形によって変化します
戦場で、これら全てを完璧に観測できれば確実に当てられるのですが、そんなことは不可能です
ならば、実際に弾を飛ばして計算で出た値からどれだけズレるかを確認する必要がある訳です
しかし、相手が見えないんじゃ着弾を確認して修正なんて事はできません。
高い場所を確保すれば見えるかもしれませんが、高い場所はどの時代でも戦闘に有利なので人気物件。
高所の確保は敵の妨害を受けることも多く、自分たちが低い位置で戦わざるをえない事だって絶対にあります。
なので、直接見えなくても着弾を観測し、目標からどの程度ズレているのかを報告する部隊を
大砲より前方に置くことで、見えなくても正確な射撃を実現しました
これを「間接射撃」と言います
現在の間接射撃は
・砲列(砲兵を配置した大砲を並べたもの)
・射撃指揮所(観測班の報告を聞いて砲兵に射撃目標や修正情報を送る)
・観測班(実際に着弾を観測しに前線に行き、射撃修正情報を射撃指揮書に送る)
という3つのグループに分けて運用されています
しかし、間接射撃にも問題があります
間接射撃が考案された当時、西暦1900年前後には歩兵が持ち歩けるようなサイズの無線通信機は無かったのです
そのため、戦場に電話線を引き、それに野戦電話を繋げて射撃指揮所まで情報を送ったわけですが
実際の戦闘では敵の砲撃などで電話線が切られることも多く、結局紙に書いて伝令を使っていたそうです
米軍が実際に使っていた野戦電話 |
二次大戦から現代にかけては当然ながら主に無線機を使って情報を送っています
米軍の着弾観測訓練
正確な射撃を行うには専門の訓練を受けなければなりません
自衛隊でもそうですが数学の成績が良くないと砲兵にはなれません
次回は、紛争地帯でもよく見ることが出来る「迫撃砲」と
紛争地帯で見ることはあまりない「榴弾砲」についての記事になります
Monacoin:MSmPH9ptv8Vp8N3JMjFCgQ25ucXv3xKTAo
0 件のコメント:
コメントを投稿