とある貨物船にまつわるお話です
改装空母とは
世界初の空母フューリアスは最初から空母として建造されたものではなく、
軽巡洋艦として生まれました。
これを改装して、飛行機を載せられる甲板を付けたのが世界初の空母と言われています
(この軽巡洋艦も意味不明な装備と配置が山盛りの珍兵器なんですが今回は割愛)
空母になる前の軽巡洋艦「フューリアス」 |
空母になった後、再度改装を受けた空母「フューリアス」 |
二次大戦前まではこのようなことは比較的よくあることで、
日本の空母も「神鷹」「海鷹」は
それぞれドイツの客船「シャルンホルスト」と大阪商船の客船「あるぜんちな丸」を改造したものです
空母になる前の「あるぜんちな丸」 |
空母改装を受けて「海鷹」となった |
「飛鷹」と「隼鷹」という改装空母も居ますがあれは設計段階で空母改造を想定していたのでちょっと例外です
他にも、建造途中の戦艦から改造された「赤城」「加賀」
高速給油艦から改造された「祥鳳」「瑞鳳」
他国でも、米国なら「ラングレー」「ボーグ級護衛空母」
英国なら「グローリアス級」「アーガス」などの例があります。
船体だけ残して上に甲板を載せるだけでとりあえずは何とかなるので、改造しやすいのです
戦後になると、このような改造空母は作られず
最初から空母として作られるのが当然になりました。
時は経ち、1982年フォークランド沖海域
英国は空母をフォークランドに派遣しましたが、
かつての大英帝国が誇った正規空母でなくて、
今では「軽空母」と呼ばれる部類の空母で、
垂直離着陸が出来る航空機のみが運用できるものでした
垂直離着陸の戦闘機は様々な国が試しましたが、
結局実用化したのは英国で開発された「ハリアー」シリーズのみ
戦闘機や軍事がよく分からない人でもアニメや漫画、小説等でもよく出てくるので
垂直離着陸が出来る戦闘機の存在は知っている人も多いのではないでしょうか
米軍で運用される「ハリアー」シリーズの最新型「AV-8B ハリアーⅡ」
(米国で開発もとい魔改造生産されてます)
英国がフォークランドに送り出した軽空母の艦載機は「BAe シーハリアー」
シーハリアーFRS1 |
当時最新の対空ミサイルAIM-9L「サイドワインダー」を搭載した高性能機でした
しかし、そんなハリアーの性質に英国軍は悩まされることになります
「継続飛行可能時間が短い」という欠点を抱えていました
燃料の消費が激しい上、着陸に用いる燃料が多い上に
燃料の搭載可能料は少ないというハリアー特有の問題です
継続飛行可能時間が短いと、何が問題なのか。
哨戒時間が短くなり、敵が発見しづらくなります
では、哨戒とは何か。
レーダーというのは地球が丸いために低い所を飛ぶ物は発見しにくいという性質が有り、
船のレーダーも同様に低い所の敵などは発見しにくいです
逆に、山に登った時に本来なら水平線の向こうに在るはずのものが見えたりするのと同様に
高いところから見下ろせばレーダーで遠くの敵も低い所の敵もよく見えます
さらに、早く気づけたとしてもそこから戦闘機を出していては既に遅い。
なので、ミサイルを吊り下げた戦闘機に空を飛ばせ、
レーダーで敵を探させつつ、発見したらすぐに攻撃できるようにしておく。
これが哨戒任務と呼ばれるものです
哨戒時間はちょっと情報が見つからなかったのですが、後継機のデータから想定するに
およそ90分。
これでは短すぎます
米軍の空母はE-2Cという大型のレーダーを載せて、遠くの敵を発見する為に
長時間飛行するという専用の「哨戒用航空機」みたいな物を持っていますが、
(実際は早期警戒機AEWと言うのですが面倒なので省略)
これの哨戒時間は5時間にも及び、2、3機載せておけば常に空に飛ばしておけますE-2C「ホークアイ」 |
高いところからレーダーで見張ることが必要なのです
実際、超低空で進入する敵機を接近されるまでレーダーで発見できなかったため、
英国海軍はフォークランドにてフリゲート艦数隻と駆逐艦を失っています
では、この状態を解決するために英国はどのように考えたのか
最初の問題は、ハリアーの数に有りました
あまりにも急な出撃となったため、
英国がフォークランドに送り込んだ2隻の空母に搭載されていたハリアーの数は
僅か20機。本来なら合わせて40-45機程を載せて、運用できるはずです
パイロットや整備の面での人員も必要ですが、機体がなければ話にならない
なので、先に出発した2隻の空母を含む艦隊の後を追うように増援の輸送艦が送り込まれました
それが、民間のコンテナ貨物船「アトランティック・コンベヤー」です
こうして、多数のハリアーを載せた「アトランティックコンベヤー」と
姉妹館の「アトランティック・コーズウェイ」はフォークランドへ向かいます
輸送艦で航空機を運ぶのは割とふつうのことですが、問題が一つ残ります
「この輸送艦には大型クレーンもなければ、空母に載せ替えるために寄れる港は敵が確保している」
海のど真ん中でクレーンもなしに載せ替えなければなりませんが、
英国は、とある手段で解決しました
では、この状態を解決するために英国はどのように考えたのか
最初の問題は、ハリアーの数に有りました
あまりにも急な出撃となったため、
英国がフォークランドに送り込んだ2隻の空母に搭載されていたハリアーの数は
僅か20機。本来なら合わせて40-45機程を載せて、運用できるはずです
パイロットや整備の面での人員も必要ですが、機体がなければ話にならない
なので、先に出発した2隻の空母を含む艦隊の後を追うように増援の輸送艦が送り込まれました
それが、民間のコンテナ貨物船「アトランティック・コンベヤー」です
アトランティック・コンベヤー |
アトランティック・コンベヤーに載せられたハリアー |
姉妹館の「アトランティック・コーズウェイ」はフォークランドへ向かいます
輸送艦で航空機を運ぶのは割とふつうのことですが、問題が一つ残ります
「この輸送艦には大型クレーンもなければ、空母に載せ替えるために寄れる港は敵が確保している」
海のど真ん中でクレーンもなしに載せ替えなければなりませんが、
英国は、とある手段で解決しました
手法は割と単純なものです。
「垂直に離着陸できるんだから自分で飛んで空母まで行ってもらおう」というものでした
しかし、このようなことを試したり、あまつさえ実際に実行したのは後にも先にも英国だけです
それもそのはず。コンテナ船は甲板がかなり丈夫なので強度は問題有りませんが、
「本来ならジェット排熱に耐えられず溶けてしまう」
はずなのです
しかし、甲板を耐熱に改造していては改装空母になってしまうほどの改造が必要で、
今直ぐに必要なのでそんな時間は有りません。
この問題に対して英国は「耐熱マットを敷く」という手段で解決しました
因みに、マットは使い捨てだそうです
フォークランドで荷物をおろしてすぐ帰ったわけではなく、
整備するときや機体の整理等を行う際もこの貨物船にハリアーを置いていたみたいです
他にも、ヘリコプターならマットを使い捨てする必要もないのでヘリコプターはこちらにまとめられていたそうです。
しかし、わざわざハリアーを運んできて数を増やしたにも関わらず
哨戒をくぐり抜けてアルゼンチン軍の攻撃機は攻撃を繰り返し、
ついにこの「アトランティック・コンベヤー」もアルゼンチン軍に撃沈されてしまいます
攻撃を受けた後の「アトランティック・コンベヤー」 数日後に沈没 |
多数のヘリコプターと陸戦用の補給物資等を大量に載せたまま沈んだので、
英軍は補給計画の見直しを迫られることになりました。
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