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2014年4月3日木曜日

非正規兵と正規兵の装備の違い:榴弾砲と迫撃砲2

ようやく迫撃砲の話ができます。因みに個人的に一番好きな兵器かもしれません。

迫撃砲の起源は「臼砲」まで遡ります

臼砲というのは、それ以外の大砲に比べて口径が大きく、短いのが特徴です
聖ヨハネ騎士団の臼砲。砲本体は3.3tもあり、砲弾は260kg
初期の臼砲は重い砲弾を壁にぶつけるための「投石機」的な役割が大きく、
砲も砲弾も非常に重い物でした。

17世紀あたりになると、榴弾を発射できるような臼砲が現れ、
壁にぶつけるにしろ、人間を狙うにしろ
軽い砲弾で高い威力を発揮できるようになりました。
(榴弾とは、砲弾の中に火薬を入れたもの。砲弾が当たると爆発するのはそのせい)

これにより臼砲は「普通の大砲に比べて軽量で持ち運びしやすい(つまり機動力が高い)
(但し、命中精度は悪く射程も短い)
という特徴を備え持つようになりました

その後、臼砲は2つの系統に分かれていきます

一つは、要塞や防御陣地を粉砕するために再び重量サイズ共に大きくなったタイプで
クリミア戦争(1854)に使われたマレット臼砲などがそれに当たります
マレット臼砲。口径91cmで砲単体で40トンもあり
砲弾も1.3トンある
このタイプの臼砲は分解することにより輸送されていましたが、
次第に車両で牽引したり、鉄道車両に載せたりするようになりました

13インチ列車臼砲
この系統の臼砲は更に巨大化を進め、60cm砲を搭載するカール自走臼砲に到達します

60cm砲を搭載するカール自走臼砲
マジノ要塞線を粉砕破壊し突破するために作られた

しかし、この重く、機動力が低いタイプの臼砲は二次大戦後一気に衰退します。
理由は非常に簡単。
破壊するべき要塞が無くなったからです。


そして、軽量で機動力が高いタイプの臼砲は日露戦争より「迫撃砲」として、
別の兵器として進化していきます。
英語だと臼砲も迫撃砲も同じ「Mortar」なんですけどね

日露戦争時に日本軍が「打ち上げ花火の容量で爆薬を的に届ける」という発想で
戦場において創りだしたのが迫撃砲の始まりだとも言われます

一次大戦時、ドイツ軍で使用された迫撃砲
一次大戦になると、塹壕と機関銃によってどんな多数の歩兵による突撃も阻止されるようになり、
機関銃を排除するために突撃前に数時間にわたって砲弾の雨を降らせても
退避壕に逃げられて、砲撃が終われば出てきて機関銃を配置し、
突撃が始まる頃には機関銃の再配置が終わっていたのです

そして、再配置が終わった所に突撃してきて再び死体の山が発生するという感じになります。

(退避壕とは、防空壕のように穴を掘って補強したもので、砲撃中はここに退避することで砲撃による被害を最低限に抑える)
右から左下にかけてがドイツの塹壕線 第一線だけでなく、後方にも第二線以降の塹壕が伸びているのが分かる
左上はイギリスの塹壕線。この間に死体の山が発生した


だったら、突撃する歩兵が機関銃の位置を把握してから直接機関銃手を狙って攻撃できればいいわけですが、
ライフルで撃って撃破できるくらいなら突撃はそもそも失敗しませんし、
大砲で吹き飛ばすにしても軽いものでも数百kgになり、歩兵が背負って移動できるものでは有りません。

そこで、迫撃砲を数人の歩兵で持って行き、機関銃の配置を目視で確認しながら砲撃するという手段が取られたわけです

このため、迫撃砲は「砲兵」でなく「歩兵」によって運用され、
現代でもほぼ全ての軍隊において砲兵隊でなく歩兵隊による運用がなされています

(砲兵はその名の通り後方からの長距離支援砲撃を主に行うのに対し、歩兵は前線で銃を使い戦闘を行う。迫撃砲は歩兵に随伴して歩兵が見える位置で砲撃を行う)


一次大戦で使われた「ストークス・モーター」は現代のものと外観も構造もほぼ変わらず、
二次大戦を経ても未だにほとんど構造が変わっていない兵器です
イギリスの迫撃砲「ストークス・モーター」

現在自衛隊で運用されている「L16 81mm迫撃砲」
筒と三脚という基本構造は変わらず、違うのは照準器くらいだろうか
さて、ここで迫撃砲の砲と砲弾の構造について少し確認しておきましょう。
砲も砲弾も、一次大戦の頃から殆ど変わっていません

迫撃砲の筒の中。つまり砲身。螺旋状の溝は掘られていない。
筒の底にファイアリングピン(砲弾に衝撃を与えて発車するための針)が見える

迫撃砲は基本的に螺旋状の溝(ライフリング)を持ちません。
迫撃砲弾。左側が下になり、右側を戦闘に飛んで行く。
右側に「羽」がついている
これは、砲弾が「羽」を持つためで、回転させずとも空気抵抗によって飛行姿勢が安定するためです
(ライフリングは先日紹介したように、回転させて『コマの回転効果』を発生させることで
弾の飛行姿勢を安定させて長距離に飛ばす技術なので、『羽』がある場合は不要)



その他に、迫撃砲の特徴としては「発射速度が速い」というものがあります
こちらは迫撃砲。砲弾がどんどん撃ち込まれていきます
10門もあればトラック一台分の砲弾が10分くらいで無くなることでしょう


対してこちらは榴弾砲。流石に迫撃砲よりは遅いですし、
迫撃砲は3人で運用できますが榴弾砲は10人ほど必要になります


迫撃砲は射撃準備が簡単で、榴弾砲が5分ほどかかるのに対し
迫撃砲なら移動してきて1分ほどで射撃を開始できます。

「歩兵が持って移動できる。つまり目立たない」
「直ぐに射撃準備ができて撤収も速い」
「命中精度は悪いがその分適当に撃って連射速度でカバーする」

さて、このような特徴で運用しやすいのは誰か。
非正規武装組織やゲリラなんかとしては

「すぐに砲撃を開始できて、一気に射撃して直ぐ逃げる」ということが出来ることに利点を見出すわけです

(動画は探したんですがちょっと見つかりませんでした)

榴弾砲を運用するには専門の知識と機材が必要で、
構造も複雑でメンテナンスも面倒になります



とまあ、武装勢力が射撃する動画は無いのでお詫びに探してる途中で見つけた動画を
紹介しましょう



こちらは動画タイトル通りで、よく見ると迫撃砲の弾を上下逆に装填してます。
飛んできて着弾するする方の信管を叩いてしまうのでそりゃ爆発もしますわ
確認ミスですね。正規軍なんかじゃこういうミスはしません。



不発で慌てたりはするようすが。
(ちなみに自分は不発弾を動画で見ても恐怖するようになりました ゲームのしすぎですかね)

他は、シリアのものが一本。


子どもたちが話しているすぐ後ろに迫撃砲が降ってきました。
合成かとも疑ったんですがそれにしては手が込みすぎです。

しかし、シリアは戦場が生活に近すぎますわ
子供を利用して「〇〇反対」なんて言ってる連中は分別してゴミ箱に入れたい位嫌いですが、
これはいくらなんでも…

この動画を見た後あの自爆した迫撃砲を見ると「ざまあww」といいたくなりますが
これは政府軍の砲撃で、上の自爆動画は反政府側なんですよねえ…

あともう一本。
結局、シリアで反政府側が迫撃砲を撃ってる動画は見つかったのですが…
利点である連射速度を生かせていなかったのでボツにしました。
まあ、仕方ない面もあります。反体制組織が手に入れられる迫撃砲と砲弾は質が悪く、
逆さまに装填しなくても暴発することも少なく有りません。
なので、正規軍のようにどんどん装填してどんどん射撃なんてことができないのです

それをやったらどうなるかといえば
こうなります。これはTalibanrと言われてますが詳細は不明です。
装填方向を間違えたわけでもないのにこうなる所が非正規軍クオリティ


次回は(もしかしたら)変な迫撃砲達を紹介するかもしれません

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